はじめに
家計を支える人が亡くなったときに、遺族の収入の支えになるのが「遺族年金」です。2025年6月に成立した「年金制度改正法」には、遺族年金の見直しが盛り込まれています。これを受けて、遺族年金の制度は2028年4月から段階的に変わっていく予定です。今回は、今後の遺族年金の見直しのポイントを紹介します。
遺族年金はどんな年金?
遺族年金は、国民年金・厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、残された家族がもらえる年金です。遺族年金には、国民年金から受け取れる「遺族基礎年金」と厚生年金から受け取れる「遺族厚生年金」の2種類があります。
<遺族年金とは?>
厚生労働省の資料より
会社員や公務員の場合、勤め先で厚生年金に加入します。厚生年金保険料には、国民年金保険料も含まれていますので、一定の条件を満たせば、遺族は遺族厚生年金と遺族基礎年金のどちらももらえます。
フリーランスや個人事業主などは、厚生年金には加入していませんので、遺族がもらえるのは遺族基礎年金だけになります。
遺族年金は、亡くなった人(被保険者)に生計を維持されていた人(遺族)のうち、もっとも優先順位が高い人がもらえます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金では、もらえる人が異なります。
<遺族年金は誰がもらえる?>
厚生労働省の資料より
遺族基礎年金がもらえるのは「子どものいる配偶者」または「子ども」のみ。「子どものいない配偶者」はもらえません。また、遺族基礎年金が支給されるのは原則として子が18歳の年度末を迎えるまで(所定の障害状態にある子の場合、20歳未満まで)です。
一方、遺族厚生年金がもらえる人は遺族基礎年金よりも幅広くなっています。子どものいない配偶者や父母・孫・祖父母などがもらえる場合もあります。
子どものいる配偶者や子どもの場合は、条件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえますが、その他の人は遺族厚生年金だけとなります。
たとえば、会社員(国民年金と厚生年金に加入)で、妻と2歳の子どもがいる30歳の夫が亡くなった場合、もらえる遺族年金の金額は次のようになります。
<遺族年金はいくらもらえる?(現行制度(令和7年改正法による改正前))>
厚生労働省の資料より
遺族基礎年金の金額は一律で、年度により多少前後があります。また、子どもの人数によっても金額が変わります。上図は2024年度の金額で作成されていますが、子どもが1人いる間は年81万6000円+「子の加算」23万4800円=年105万800円となっています。
遺族厚生年金の金額は、亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4です。また、厚生年金の加入期間が25年に満たない人が亡くなった場合には、厚生年金に25年加入したとして計算します(300月ルール)。この例では、亡くなった夫の厚生年金加入期間は22歳から30歳までの8年間ですが、25年加入したとして計算されるため、遺族厚生年金の年額は43万1600円となっています。なお、遺族年金は非課税です。
この妻は、子どもが18歳年度末を迎えるまで遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえます。また、子どもが18歳年度末を迎えたあとも遺族厚生年金が原則、生涯にわたってもらえます。