はじめに
「昇給したはずなのに手取りが増えていない…」そんな違和感を感じたことはないでしょうか? 実際、入社2年目以降の手取りは、初任給よりも1〜2万円ほど減ることが少なくありません。これは、税金や社会保険料など“目には見えにくい負担”が増えていくためです。
この記事では、転職や減給などを除いた「手取りが変動する5つのタイミング」を時系列に沿って解説し、それぞれの時期に何が起きているのか、どう備えるべきかをご紹介します。
未来の自分を安心させるためにも、“知っておくこと”は立派なマネープラン。変化に振り回されずに向き合うヒントをお伝えします。
初任給の次にくる変化:社会保険料の控除スタート
初任給を受け取ったとき、「意外と手取りが多かった」と感じた方も多いはずです。実はこれは、“初月だけの現象”です。
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、原則として前月の給与をもとに計算されるため、初任給には保険料の控除が反映されていないことが一般的です。しかし、2か月目の給与からはしっかりと天引きが始まります。
例えば、東京都在住の社会人1年目のAさん(扶養家族0人)の額面給与額が「20万円」の場合、会社と折半で社会保険料がかかり、自己負担は約28,000円でその分手取りも減少します。
このタイミングで「手取りが減った」と感じて不安になりご相談にくる方もいらっしゃいますが、あらかじめ仕組みを知っておくことが、不安を減らす第一歩です。
2年目の6月ごろ:住民税の天引きが始まる
社会人1年目は、前年に収入がなかったため住民税の課税対象外です。しかし、入社2年目の6月からは、1年目の所得に応じた住民税の負担が始まります。
住民税は、お住まいの自治体や前年の所得によって異なりますが、年間で数万円から十数万円程度になることが多く、それを12か月に分けて給与から天引きされます。
ただし、4月入社の場合、2年目に給与から天引きされる住民税の課税対象月は、入社1年目の4月~12月までの9カ月分です。1年分ではないため負担は少ないのです。3年目になると、1月~12月までの12カ月分が課税対象月となるため、さらに税額が高くなるので注意しましょう。
これにより、社会保険料に加えて住民税の控除も加わり、手取りがさらに圧迫される時期となります。
昇給の数か月後:社会保険料の随時改定に注意
昇給は嬉しいものですが、手取りがそのまま増えるとは限りません。
なぜなら、昇給により標準報酬月額が変わると、社会保険料も再計算されるためです。これを「随時改定」と呼びます。昇給のあった月から3か月分の給与の平均で新しい報酬月額が決まり、改定された保険料はさらに2か月後から反映されます。
たとえば、前述の東京都在住で額面給与額20万円のAさんが月収が3万円アップした場合、健康保険料・厚生年金保険料はあわせて月5,600円程度増えることになります。結果として、昇給分のすべてが手取りに反映されず、「増えたはずなのに実感がない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
制度を理解しておくことで、「昇給したのに増えていない」というギャップを受け入れやすくなります。