はじめに

「老後資金5000万円」。この金額を聞いて、途方もない目標だと感じませんか? 特に40歳を迎え、まだ十分な準備ができていないと感じている方は、「毎月、家計を圧迫するような高額な投資をしないと無理なのでは?」「リスクの高い金融商品に手を出さなければ達成できないのだろうか?」といった不安が頭をよぎるかもしれません。しかし、適切な知識と計画、そして少しの工夫によって、40歳からでも十分に現実的な方法で、この目標を目指すことは可能です。

なぜ今、これほどまとまった老後資金が必要といわれているのか、5000万円という目標金額に無理なく到達するための考え方や資産形成において本当に大切なことについてご紹介します。


老後資金5000万円を「無理なく」作るための考え方

「老後資金5000万円」という金額だけを見て圧倒される必要はありません。この目標を「無理なく」達成するために最も重要な考え方は、「65歳になった時点で、現金でまるごと5000万円を用意しておく必要はない」ということです。老後資金は、リタイア後の生活費として少しずつ取り崩していくものです。一度にまとまった資金が必要になるのでない限り、全額を現金で保有している必要はありません。

例えば、40歳から65歳までの25年間、積立だけで5000万円を準備するには、毎月約16.7万円の積立が必要です。この金額を毎月捻出するのは、多くの方にとって大きな負担でしょう。そこで、「全額現金で保有している必要はない」という考え方に基づき、資産運用をうまく活用することで、現実的なプランニングが可能になります。

また、将来の不安から現在の生活を極端に切り詰めるのではなく、現役時代も老後も、どちらの期間も豊かに過ごせるよう、資金計画にバランスを持たせることも大切です。後になって「若い頃にもっとやりたいことをやっておけばよかった」「お金を経験に使うことを躊躇しなければよかった」と後悔することがないよう、今のうちから将来を見据えた計画を立て、準備を進めることが、後悔のない人生を送るためにも重要だといえるでしょう。

40歳からでも現実的な老後資金シミュレーションパターン

それでは、具体的に老後資金5000万円を準備するために、どのような方法が考えられるのでしょうか。リタイアしてから90歳まで年間200万円を取り崩すとして、以下2つのケースでシミュレーションを見ていきましょう。シミュレーションでは、資金を運用する場合の前提として、利回りは年率4%と仮定しています。

①65歳でリタイアする場合:65歳から90歳までの25年間、年間200万円ずつ取り崩す(合計5,000万円が必要)
②70歳でリタイアする場合:70歳から90歳までの20年間、年間200万円ずつ取り崩す(合計4,000万円が必要)

パターン1:貯金だけで準備する場合

このパターンでは、資金を一切運用せず、貯金だけで目標額を用意するケースを想定します。目標時点(65歳または70歳)で必要となる元本は、取り崩し期間分の総額です。

・65歳時点で5,000万円を目指す場合(25年間積立)
 毎月の積立額:約16.7万円
・70歳時点で4,000万円を目指す場合(30年間積立)
 毎月の積立額:約11.1万円

毎月10万円、ましてや15万円を超える積立額は、40代の家計にとっては大きな負担になる方がほとんどでしょう。貯金だけでこの目標を達成するのは、かなり難易度が高いといえます。

パターン2:資産運用しながら準備する場合

次に、貯金ではなく、資産運用を活用する場合を想定します。目標額はパターン1と同様ですが、運用利回り年率4%で積立投資を始めた場合の毎月の積立額を見ていきましょう。

・65歳時点で5,000万円を目指す場合(25年間積立)
 毎月の積立額:約9.7万円
・70歳時点で4,000万円を目指す場合(30年間積立)
 毎月の積立額:約5.8万円

パターン1と比較すると、必要な積立額がかなり抑えられていることがわかります。資産運用を活用することが、目標達成を現実的にする上で非常に効果的であることがわかります。

パターン3:運用しながら取り崩す場合

さらに、老後資金を取り崩していく際にも、年率4%で運用を継続する場合を想定してみましょう。資産が目減りするスピードを緩やかにできるため、目標時点(65歳または70歳)で準備しておく必要のある金額は大幅に少なくなります。

・65歳時点で必要な金額: 約3,200万円
・70歳時点で必要な金額: 約2,800万円

この目標を達成するために、40歳から運用利回り4%で積立投資を始めた場合の毎月の積立額は以下のようになります。

・65歳時点で5,000万円を目指す場合(25年間積立)
 毎月の積立額:約6.2万円
・70歳時点で4,000万円を目指す場合(30年間積立)
 毎月の積立額:約4万円

いかがでしょうか? 特に70歳まで積み立てを続けるシミュレーションについては、かなり現実的に感じられる金額ではないでしょうか。

さらに、現在保有している貯金の一部を初期投資に回すことも検討できます。仮に40歳時点で300万円を初期投資として運用に回したとすると、70歳時点で2800万円準備するために必要な積立金額は月2.6万円程度で済むというシミュレーションになります。このように、いつまでにいくら必要なのか、そしてそれを「どのように使っていくか」という視点を持ち、資産運用も活用しながらプランニングすることで、老後資金の目標達成はグッと現実的になります。

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