はじめに
秋になると、小学校や地域のイベントでバザーや出店のチラシを見かけることが増えてきます。買い物の経験は日常でもできますが、「売る側」を体験できるイベントは限られます。
子どものお金教育は、「おこづかいを渡す」「貯金箱で貯める」だけにとどまりません。お金には、“買う”“売る”“考える”など、さまざまな視点があります。
私は、金融教育を伝えるFPとしても子育て中の親としても、実際のやり取りを伴う体験こそが一番の学びだと感じています。中でもバザーは、家庭では再現しにくい「売る・買う」の両方を安全な環境で経験できる絶好の場です。金銭教育の入り口として活用する方法をお伝えします。
値段をつける力=価値を見極める力
バザーの準備を始めると、まず最初に親子で向き合うのが「値段をどうするか」ですよね。「新品みたいだから高く売りたいけど、誰も買ってくれなかったら…」と、子どもは案外真剣に考えます。
我が家の長男が持って行った本のセットは、最初1,000円の予定。でも「他のブースに同じシリーズが500円で並んでいたら?」と一緒に想像すると、「じゃあ800円にして、リボンをつけて目立たせよう!」と工夫を加えました。当日、それが真っ先に売れて本人も大喜び。
さらに、値段をつける過程で「まとめ買い割引」や「お友だち価格」などの発想が出ることもあります。これも立派な販売戦略。このプロセスで学ぶのは、単なる値付けではなく「相手にとっての価値」を考える力です。
親子で「なぜその値段にするのか」を会話しながら決めることが、価値を見極める力の育成につながります。こうした工夫は、大人になってからのビジネス感覚の基礎になるだけでなく、物やサービスの価値を冷静に見極め、無駄な出費や投資での失敗を防ぐスキルにもなります。
限られたお金で“選ぶ力”を育てる
売る楽しさを知ったら、次は「買う側」としての経験も大切にしたいところ。「持っていけるお金は500円まで」などルールを決めると、子どもはお財布を握りしめて真剣に品定めを始めます。
たとえば「高い物を1つ買うか、安い物をいくつか買うか」「おやつとおもちゃ、どちらを優先するか」など、選択の幅が広がるほど迷います。この“迷う時間”こそが、誰でもない「自分がもつ価値観」に気付き、買い物に優先順位をつける力を育てます。
次女(小2)は、ぬいぐるみ200円とおもちゃの指輪50円を手に取り、「どっちも欲しいけど、おやつも買いたい…」と予算とにらめっこ。結局ぬいぐるみを選び、残りはおやつ代にしました。
事前に予算配分を考えてから買い物すると、衝動買い防止にも。「自分にとって心地いいお金の使い方」を身に付け、お金の価値観を磨くため、子どものうちに失敗からの学びの現場をできるだけ多く経験してほしいと考えています。