はじめに
日本証券業協会が6月末時点の「NISA口座の開設・利用状況」を発表しました。大手証券会社10社を対象にしたヒアリング調査なので、他の集計結果と異なる点はありますが、現時点のNISAの状況を把握するうえで参考になります。
口座開設ペースはややスローダウン?
まず口座開設件数などから見ていきましょう。
2025年6月末時点の口座数は1713万口座でした。年初から6月末までに開設された口座数は113万口座です。昨年6月末時点の年初からの開設口座数が244万口座だったので、ややペースダウンといったところでしょうか。
そこで、毎月末時点における口座数の推移から前月比を計算すると、2024年2月は3.99%増だったのが徐々に低下傾向をたどり、同年9月末の増加率は1%を割り込み0.70%増となりました。
年初はNISA口座の開設者が増える傾向が見られ、2025年1月は前月比で1.80%増となりましたが、月を追うごとに少しずつ増加率は低下し、2025年6月の増加率は0.59%に止まっています。
NISAの制度見直しが行われ、制度の恒久化や非課税期間の無期限化、生涯投資枠の大幅拡大が行われ、非常に高い注目を集めたNISAですが、すでに資産運用をしている、もしくは資産運用に興味を持っている人たちの取り込みは一段落というところでしょうか。ここから先は、資産運用に興味を持っていない人の取り込みになりますから、新規口座の開設件数がペースダウンするのは、仕方がないことなのかも知れません。
次に買付額ですが、月間の前年同月比を成長投資枠、つみたて投資枠の両方について見ていくと、こちらもややペースダウンしています。成長投資枠は、240万円という年間の投資枠の範囲内で、タイミングを見ながら買い付ける人も少なくないと思うので、月ごとのブレが生じるのは仕方がないところでしょう。
一方、つみたて投資枠は一度始めると、毎月一定額で積み立てる人が多いと考えられるので、口座数が増加すれば、それにともなって買付額も徐々に増えていくと思ったのですが、前月比は案外、ばらつきが生じています。
つみたて投資枠の人気はインデックスファンドが独占
気になったのが、成長投資枠とつみたて投資枠で買われている投資信託の種類です。
NISA買付額のうち成長投資枠とつみたて投資枠の割合は、成長投資枠71%、つみたて投資枠29%でした。
大方、予想がつく通り、成長投資枠での買付額は株式がやや多い59%で、投資信託が41%ですが、NISA全体の買付額では、国内株式の占める割合が39%で、投資信託が58%、残る3%が外国株式です。
そして、ここが最も気になった点なのですが、NISA口座の買付額上位10ファンドのなかに、国内株を対象にしたアクティブファンドが1本も入っていません。
成長投資枠を通じて買われている上位10ファンドのうち、投資先では海外が7本、内外が3本でした。そのうち、インデックス型が7本で、アクティブ型は3本ですから、国内株に限定して運用されるアクティブファンドは1本もありません。
また、つみたて投資枠は海外が7本、内外が3本で、インデックス型が10本を占めています。こうした点から、NISAを通じての資産形成においても、インデックスファンドが非常に優勢であることが分かります。そのなかでも、S&P500やMSCI-ACWI(オール・カントリー)に連動するタイプのインデックスファンドが、金額ベースではかなりの部分を占めていることが、容易に想像できます。
では、なぜ日本株アクティブファンドが、ここまで劣勢を強いられているのでしょうか。
確かにここ2年ほど、日本株アクティブファンドの運用成績が振るわなかったという側面はあるかも知れません。TOPIXを参考指数にして、日本株アクティブファンドのリターンを比較すると、特に東証改革によってPBR1倍割れ銘柄が大きく買い上げられた2023年3月前後から、参考指数に劣後するケースが目立ち始めました。