はじめに
「日銀9月利上げ」ならサプライズ要因か
次に注目されるのは、9月18日〜19日に開かれる日銀の金融政策決定会合でしょう。前述の同会議に出席した植田総裁は、出席したパネル討論会で「日本の労働市場は引き締まった状態が続いていて、賃金には上昇圧力がかかり続ける」と発言。追加利上げについては言及しませんでした。
ここ数カ月、植田総裁は再三にわたって「トランプ関税による不確実性が極めて高く、追加利上げについては指標を見ながら慎重に判断する」と述べています。トランプ関税の不確実性については解消されつつあるものの、9月の決定会合で追加の利上げに踏み切るかどうかは、金融関係者の間でも意見が分かれています。この決定会合で利上げが行われれば、サプライズ感が増すため、為替相場では円高が進む可能性があります。
もうひとつ、9月は自民党総裁選が行われる公算があります。これについては、8月上旬のコラム「『政局は売り』は本当?」で述べたように、「株式相場にとって一大転機があるかないか」によって、その後の相場の方向性が決まってくると思われます。現状では、実際に政局がどう動くかは不透明であり、投資スタンス的にはいまのところニュートラルな状態。総裁選の日程や候補の顔ぶれなど、具体的な内容が決まり次第、それによって相場がどう動くか考えるべきでしょう。
トランプ関税の影響が本格化する中間決算は要注目
10月下旬から11月にかけて発表される3月決算企業の中間決算の動向は、個人投資家にとって見逃せないところでしょう。トランプ関税が本格的にスタートしたのは8月で、その影響が業績に反映されるのは7-9月期決算からになるためです。
日本の主要な輸出企業(特に自動車関連)の、期初の想定為替レートは1ドル=140~145円が主力帯。一般的に、日本企業の期初の業績予想・想定レートは保守的とされますが、もし9月中に「米国の利下げ」や「日本の利上げ」のどちらかが行われることで円高が進めば、輸出関連株の株価の上値は重たくなりそうです。もし、「日米利上げ」ともなれば、決算集計を担当する経理部や財務部は多忙な秋を迎えることになるでしょう。
9月の金融政策決定会合で日銀が利上げに踏み切らない場合、次の会合が開かれる10月29日〜30日と、12月18日〜19日に向けて、さまざまな意見が出てくると思われます。ちなみに、7月30日〜31日の決定会合の議事要旨が出てくるのは9月25日。9月の決定会合の議事要旨が出てくるのが11月5日です。この議事要旨を並べて読むと、「7月の決定会合ではこういう表現があったが、9月の決定会合では違う表現がされていた」など、文言や表現の変化によって、日銀のスタンスの変化がわかります。
議事要旨はおおむね20~30ページで、ボリュームが小さくはありません。ただ、議事要旨の公開を受けて、証券会社やシンクタンクがそうした変化をレポートにまとめてくれるので、個人投資家はそのレポートをチェックすればOKです。
ここまで、2025年8月に起きたイベントや、9月以降の重要イベントについて紹介してきました。これらの結果によって、個人投資家は投資スタンスや投資戦略を変更していく必要があるでしょう。もし、相場の流れを大きく変えるイベントや指標が浮上したら、その際は再び当コラムで取り上げていく予定です。
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