はじめに
市場を動かす「恐怖」と「回復」
大災害が発生すると、まず市場を支配するのは「恐怖」です。資金は安全資産に流れ、株式市場は急速に売られます。特に被災地に拠点を置く企業やエネルギー関連、輸出産業などは大きな打撃を受けやすい傾向があります。
一方で、復興需要が期待される建設・インフラ関連、生活必需品を扱う企業は、比較的早い段階で買い戻されることもあります。市場が冷静さを取り戻すまでには時間がかかりますが、パニックの中でも冷静な目を持ち続けた投資家は、資産を守るだけでなく、次の成長の波を掴むこともできたのです。
東日本大震災では、外国人投資家が株価下落時に大きく買い越し、その後の反発局面で利益を得ていました。その時に日経平均(に絡んだ商品)を購入していたら利益になったわけです。恐怖の中でこそ、冷静な判断が試されるのです。
投資家に求められる備え:分散・ルール・災害耐性
投資家にとって重要なのは「平時からの準備」です。災害はいつ、どこで起こるか分かりません。そのため、投資家として日頃から準備をしておくことが不可欠です。
基本まずは、ポートフォリオの分散です。株式だけに資産を集中させず、債券や外貨、金、REITなど、異なる値動きをする資産を組み合わせておくことで、災害時の急激なリスク資産売りの影響を和らげられます。また、一定のキャッシュポジションを持つことも有効です。暴落局面で冷静に買い増しができる余力を確保できるからです。
さらに、投資対象の企業がどの程度の「災害耐性」を持っているかを平時から見極めておくことも大切です。多拠点での生産体制や堅固な財務基盤、リスク分散されたサプライチェーンを持つ企業は、災害からの立ち直りも早い傾向があります。
そして、感情に流されないためのルール作りも欠かせません。災害時の急落局面では「もっと下がるかもしれない」と恐れてパニック売りをしてしまうケースが多く見られます。あらかじめ「この水準まで下がったら買う」「この損失額に達したら売る」という明確なルールを持ち、機械的に実行できるよう準備しておくことが、冷静な判断につながります。