はじめに
日本銀行は9月18日から2日間にわたって開催された金融政策決定会合において、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%で据え置くことを決定しました。これにより、5会合連続で現状維持となりました。
一方で、日銀が保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の売却を開始する方針を決定しました。この発表直後、日経平均は一時的に前日比で800円を超える下落を記録する場面がありました。しかし、日銀はETFを年間簿価で3,300億円程度、時価で6,200億円程度のペースで売却する計画であり、REITも同様に簿価50億円程度、時価55億円程度を売却する方針です。このペースで売却を進めると、完了までには100年以上かかる見通しです。このことから、市場への影響は限定的との見方が広がり、株価は上昇に転じました。9月26日には日経平均が史上最高値を更新しています。
現在の株価上昇に伴い、日銀が保有するETFの簿価は80兆円を超え、含み益は50兆円に達するとも試算されています。今回の日銀による試算売却は、こうした膨大な試算をどのように処分していくのか、かねてから注目されていました。
日銀がETFを保有するに至った経緯
日銀は2002年から2010年にかけて、バブル崩壊後の金融機関の財務悪化や金融システム不安を防ぐために、金融機関が保有する株式を買い取っていました。この買い取り株式の売却が2025年7月に完了したことが、今回の決定につながった理由の一つとして挙げられます。
この株式売却は、約10年をかけて進められました。日銀が示した売却ペースは、市場全体の売買代金に占める割合が0,05%程度とごくわずかでした。これは、数社の自社株買い程度に相当する規模で、株式受給への影響は軽微でした。今回のETFやREITの売却も、これと同様の緩やかな方法が採用される見通しです。
では、なぜ日銀はETFを購入する必要があったのでしょうか?
日銀によるETF買い入れは、2010年に当時の白川総裁の下で始まりました。資産デフレ対策と2%の物価安定目標を目指すため、残高上限4500億円のETF買い入れを決定。連動対象指数はTOPIXと日経225で、当初は2011年末までの期限でした。
しかし、2013年4月には、黒田総裁が導入した「量的・質的金融緩和」によって、ETFの買い入れ額は年間1兆円に増額され、その後も段階的に増額されました。購入商品もTOPIX中心に変更されました。さらに2020年3月には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融市場の動揺を抑えるため、ETFの買い入れ目標額は6兆円から12兆円へと倍増されました。REITも同様に、買い入れ目標が900億円から1800億へと倍増しています。
こうした推移を振り返ると、日銀のETF買い入れは、2013年の年間1兆円から、2016年には4兆円に拡大し、コロナ禍の2020年には年間7兆円を超える購入額となりました。中央銀行によるETF買い入れは、市場機能の低下や、日銀の財務リスクを高める、中立性を損ねるといった批判もありました。それでも、2025年3月末時点で簿価37兆円、時価70兆円に達し、現在の株高を受けて時価は80兆円を超えるとの試算もあります。