はじめに

一般家庭が備えるべきリスクとは

「身体パーツ保険」という発想が合理的に成り立つのは、ハンドモデルやピアニスト、トップアスリートなど、身体そのものが収入源となる職業に限られます。彼らにとって手や脚を怪我することは、収入の喪失に直結するからです。

ですが、一般家庭にとっては身体の一部を怪我したときに大きな一時金を得ることよりも、働けなくなったときに生活をどう維持するかを考える方が、はるかに現実的です。病気やケガで長期間働けなくなることで収入が途絶えれば、住宅ローンや教育費、日々の生活費の支払いが困難になります。

会社員であれば傷病手当金や障害年金といった公的保障がありますが、それだけで生活を維持するのは難しいのが実情です。自営業やフリーランスであれば、なおさら手厚い備えが必要となります。これらのリスクに備えるには、就業不能保険や収入保障保険を活用することが有効です。

また、医療費のリスクも考えられます。高額療養費制度によって自己負担は一定程度抑えられるものの、入院になった場合は、差額ベッド代や先進医療、長期療養に伴う雑費などは自己負担となります。こうした費用を補うのが医療保険やがん保険です。

まずは現在加入している保険を整理し、保障内容を確認してみましょう。そのうえで、働けなくなったときの生活費や医療といった、必要性の高いものから優先順位をつけ、足りない部分を保険で補えば、無理のない家計管理につながります。

現実に寄り添った備えこそが、日常の安心をつくる

「手に1億円の保険」という話題は、耳にした瞬間に強いインパクトを与えます。ですが実際には、日本には身体の一部だけを対象にした保険は存在せず、一般の人が加入できる商品ではありません。海外のエピソードとしてはユニークで魅力的に映るかもしれませんが、私たちの暮らしにそのまま当てはめることはできないのです。

私たちが直面する可能性が高いリスクはもっと身近なところにあります。病気やケガで働けなくなり、収入が途絶えてしまったとき、生活は一変してしまいます。日々の暮らしを守るために必要なのは、インパクトのある「身体パーツ保険」ではなく、現実に寄り添った備えです。自分や家族に合った保障を整え、未来への不安を少しでも和らげることが、日常を支える大きな力となるのではないでしょうか。

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