はじめに

2025年10月4日に行われた自民党総裁選選挙で、高市早苗前経済安全保障担当相が第29代総裁に選出されました。党の歴史上、女性が総裁に就任するのは初めてです。高市氏は、安倍晋三元首相の「アベノミクス」路線を継承し、財政支出による景気刺激策を重視する姿勢を示し、利上げには慎重な立場を取っています。

この当選を受け、週明けの日経平均は前週末比2175円高となりました。特に高市氏が掲げる政策と関連が深い、防衛関連や原子力発電関連、核融合発電関連の銘柄が上昇しました。また、サイバーセキュリティー対策本部長を歴任したことからサイバーセキュリティ関連株も値を上げました。今回は、高市氏の政策から今後成長が期待されるセクターと関連する注目企業を紹介します。


成長戦略の柱:経済安全保障と関連産業

高市氏が特に力を入れるのが、経済安全保障の強化と次世代産業の育成です。その具体例として、ペロブスカイト電池や全固体電池といった技術が挙げられます。

ペロブスカイト太陽電池

この次世代型太陽電池は、特殊な結晶構造を持つ化合物を使い、軽量・柔軟・低コスト、そして低照度でも発電が可能という特徴を持ちます。政府は経済安全保障や産業競争力強化の観点からその普及を支援しており、2025年9月には、リコーやパナソニックホールディングスなどの技術開発・実証試験費用として、5年間で総額246億円を補助することが決定しました。

また積水化学は、薄くて軽く、折り曲げられる「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」の量産化を発表。2025年1月には新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」を設立し、大阪・堺市に工場を建設します。2027年度には100メガワット、2030年度には1ギガワット級の生産能力を目指す計画です。

全固体電池

全固体電池は、従来の電池が使用する液体電解質(電解液)を固体に置き換えた次世代電池です。これにより、安全性の向上や急速充電が可能になるなどのメリットがあります。トヨタ自動車は2027年〜2028年の実用化を目指しており、全固体電池の材料の一つである正極材量産に向けた共同開発契約を住友鉱山と締結しました。

また出光興産も2025年2月に、全固体電池の材料となる「硫化リチウム」の量産に向け、大型製造装置の建設を決定しました。2027年6月に年産1000トンの設備を完成させる予定です。

食料安全保障とスマート農業

食料自給率の向上と農業の効率化も重要な政策課題です。高市氏は、2025年度から2029年度までの「農業構造転換集中対策期間」に集中的な投資を行うとしています。具体的には、農地の大区画化やスマート農業の推進などが掲げられています。

農業機械メーカーは、こうした政策を追い風に、最先端技術の開発を加速させています。クボタは、世界で初めて無人で米や麦の収穫ができる自動運転コンバインを2024年に市場投入しました。これにより、トラクター、コンバイン、田植機のすべてで無人運転仕様が揃いました。

同社はさらに、2026年をめどに遠隔監視による無人運転農機の実用化を目指し、官学の研究機関とも連携して研究開発を進めています。一方、井関農機は、2025年6月に小型の乗用田植え機を発表し、コストを抑えた製品で国内の法人需要を開拓する戦略を打ち出しています。2030年までに売上高に占める大型農機の割合を、現在の40%から50%以上に引き上げる目標を掲げています。

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