はじめに
未来に向けたヤクルトの“反撃”施策とは?
業績が苦しい今、ヤクルトはただ手をこまねいているわけではありません。国内外で販売が鈍化する中、再び成長路線に戻るための“反撃”に向けた動きも少しずつ始まっています。
まず取り組んでいるのが、「現地の嗜好に合わせた商品開発」です。ヤクルト1000のような機能性飲料がヒットした一方で、その成功が一部の国・地域に偏っていたことも反省点としてあります。そこでヤクルトは、国や地域ごとの味の好み、糖質への関心、パッケージのデザインといった要素を精緻に調査し、それぞれの市場に合った“ローカライズ型製品”の開発を進めています。
たとえばベトナムでは、糖分を抑えた「ライト版」の投入が好評を得ており、今後は他国でも同様の戦略を展開する方針です。また、グローバル商品開発拠点の整備も視野に入れており、「ヤクルト=健康」のイメージを強化する機能性成分を追加した新商品にも力を入れる構えです。
販売戦略でも変化が起きています。これまで訪問販売(ヤクルトレディ)に依存していた地域では、都市部の生活スタイルやニーズに合わせて、コンビニやドラッグストア、Eコマースを含めた「オムニチャネル型」の販売網の構築が進められています。特に若年層をターゲットにしたオンライン直販や定期購入モデルの強化は、今後の収益安定化にも寄与する可能性があります。
さらに、海外では医療機関や高齢者施設など“健康意識の高い場所”への流通チャネル開拓も視野に入れており、商品を「飲み物」ではなく「健康ソリューション」として展開する姿勢が見え始めています。
また、足元のコスト構造も見直し中です。ヤクルトは現在、過剰な設備投資の再検討や、生産・物流の合理化に取り組んでいます。これにより、収益力の底上げを狙うとともに、原材料費やエネルギーコストが高止まりする中での“守り”の体制も整えようとしています。
さらに、株主との関係にも一定の変化が見られます。6月の株主総会では米ファンドの要求を拒否したものの、すべてを突っぱねるわけではなく、将来的な自己株買いや配当方針の見直しについて「柔軟な対応を検討する」との姿勢も示されています。これは、成長投資と株主還元の両立を目指す姿勢であり、IRの改善や対話の強化にもつながっていくでしょう。
このように、ヤクルトは商品・販売・コスト・資本政策と、あらゆる面で再成長への布石を打ち始めています。
これらの施策が今後数字に現れてくれば、おそらく株価は反転すると考えています。なぜなら「ヤクルト」は、他の乳酸菌飲料とは一線を画す唯一無二の存在です。そのレシピは、コカ・コーラのようにブラックボックス化されており、容易に模倣されない強みがあります。この先、日本人がヤクルトを飲まなくなる日が来るのはイメージできません。
このままずるずる衰退していくのか、それとも優等生企業の意地を見せるのか、ここからの動向に注目したいと思います。
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