はじめに

2001年10月に導入された確定拠出年金制度は、2025年10月で25年目を迎えました。当初に比べると、制度の拡大は注目に値するものですが、「わかりにくい」との意見も多いようです。今回は確定拠出年金の四半世紀を振り返ってみます。


拡充が進むNISAと対照的なiDeCoの「難解さ」

資産形成アドバイスを中心として活動するファイナンシャルプランナーの筆者の元には、個人相談のお申し込みが頻繁に来ます。商品販売を行わない独立型のFPなので、まずは国の税制優遇制度を活用するべきとして、少額投資非課税制度と確定拠出年金制度をお話します。

少額投資非課税制度はご存じの通りNISAで知られており、2024年に非課税期間が無期限になるなど注目を浴び、ほとんどのご相談者が「知っている、やってみたい」とおっしゃいます。

一方、度重なる法改正によりどんどん拡充される確定拠出年金は、2017年に個人型確定拠出年金にiDeCoというニックネームをつけ、加入資格も拡充されたものの、「掛金が所得控除になるのは魅力だがなんだか難しそう」と敬遠されがちです。

確定拠出年金は、2001年の導入当初から、正直評判は芳しくなかったと記憶しています。当時は特に「自分で運用をする」というところが、「日本人に投資は無理」と一蹴されたところがありました。

自分で運用するという点については、NISAの普及に従い、世の中の理解も進んで来たと思われますが、「難しい」と言われる点では、掛金上限額の複雑さがダントツのようです。

現在iDeCoの掛金上限額は、自営業者は月68,000円(国民年金の付加保険料、国民年金基金の掛金の合算)です。この金額は過去から変更されておらず、今回の改正で75,000円へと引き上げが予定されています。

第3号被保険者については、2017年に加入資格が拡大されて以降23,000円で固定されたままです。公的年金を補完する役割を担う確定拠出年金であることを考えると、第3号被保険者の公的年金保険料は免除ですから、今後の変更もないのではないかと考えます。

加入者が最も多い「第2号被保険者」を巡る混乱

一方もっとも加入者が多い第2号被保険者については、何度も変更があり、「とてもわかりにくい」仕組みとなっています。

2001年:企業年金のない会社員の掛金上限額は月15,000円
(会社員で唯一個人型確定拠出年金の加入資格者)

2010年:企業年金のない会社員の掛金上限額は月23,000円
企業年金(確定給付企業年金DB)がある会社の方は月18,000円
(加入資格者の拡大)

2017年:企業年金(確定給付企業年金DB)がある会社の方は月20,000円
企業型DC加入者がiDeCo資産の同時保有が可能に※

2022年:企業型DC加入者のiDeCo併用加入の掛金上限額は月20,000円

※これまでは企業型確定拠出年金に加入している人は個人型確定拠出年金に加入できないというルールでしたが、2017年には二つの制度に資産を持つことができるようになりました。例えば、個人型確定拠出年金加入者が転職により企業型DCの加入者になった場合、それまでは必ず資産を移換しなければなりませんでしたが、改正により、個人型確定拠出年金の資産をそのまま保有しつつ、企業型DCへ加入をすることができるようになりました。

移換は、すべての運用資産が売却され、移し換えるためにはある程度の時間を要するデメリットがありましたが、この改正により改善が見られました。転職により企業型DCの加入資格を失った際の移換は、仕組み上なくなることはないと思われますが、少なくともiDeCoにおいては、投資の連続性を失うことなく継続することができるようになったのは大きな変化でした。

なお、企業型DCに加入しつつiDeCoにも併用加入、つまり掛金拠出が認められるようになったのは、2022年です。この時、iDeCoの掛金上限額は20,000円になりました。

さらにiDeCoを選ぶか、マッチング拠出を選ぶのか、それぞれに掛金上限額が設定されるなか、選択ルールが複雑になっているのは、多くの方が知るところになります。

また2024年には、他制度掛金相当額(DBなど会社側が負担している年金掛金のこと)との合算での掛金上限額が設定され、さらに複雑さを極めました。そもそも「他制度掛金」という名称もわかりにくいですし「相当額」という言い方も曖昧な印象を与えます。

第2号被保険者のiDeCoの掛金は企業年金の有無によって上限額が決まるため、会社への確認が必要です。2024年12月に事業主証明書の提出が廃止になったものの、「任意加入の私的年金制度なのに、なんだか面倒」という感覚は拭えないままです。

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