はじめに
コロナ禍を契機にリモートワークが広がり、働き方や暮らし方に大きな変化が生まれました。その中で注目を集めているのが「二拠点生活」です。
国土交通省の令和4年度調査によると、27.9%の人が二拠点生活に関心を持つ一方、実際に実践しているのは約6.7%にとどまっています。つまり「気になるけれど一歩を踏み出せていない」人が多いというのが現状です。
「二拠点生活はお金に余裕がある人だけのもの」そう思っていませんか? 筆者はその考え方はもったいないと感じています。費用と心理的リターン(幸福感など)を比較すると、十分検討に値する選択肢だからです。
本記事では、FPである筆者自身の体験談から、二拠点生活を始めた経緯、必要な費用、そしてお金では測れない真の価値をご紹介します。特に「趣味をもっと楽しみたい」「週末にリフレッシュしたい」と考えている都心住まいの方にとって、大きなヒントになるはずです。
なぜ二拠点生活を始めたのか
筆者は、以前から趣味のサーフィンのために日帰りで千葉の海に通っていました。二拠点生活に興味を持ったのは、この趣味をストレスなく自由に楽しみたいという思いからでした。
千葉に拠点を持つ前は、日の出前に出発して片道2時間かけて千葉へ行き、帰りは渋滞に巻き込まれ、次の日に疲労が残ることもしばしば。時間に余裕を持つため、海の近くに前泊することもありましたが、イベント開催時には宿が高騰・満室で思うように確保できないこともありました。
こうした経験から、趣味を気軽に楽しめない歯がゆさを感じていました。
そこで注目したのが二拠点生活です。東京の自宅をベースにしつつ、海の近くにもう一つ拠点を持てば、時間にも気持ちにも余裕が生まれるはずだと考えました。実際に賃貸物件を探してみると、家賃や駐車場代が思ったより安く、かさばるサーフボードなどを保管できるメリットも考えると、現実的な選択肢だと感じました。
千葉での生活を具体的に調べることで、毎週のサーフィンがもっと楽しめる!とワクワクすることができたので、筆者は東京と千葉の二拠点生活を始める決断をしました。
次は、気になる「費用」について、筆者の経験に基づき整理していきます。
二拠点生活の初期費用
二拠点生活を考える上で欠かせないのが「初期費用の把握」です。筆者の場合、千葉で家賃(部屋+駐車場)が35,000円/月の物件を借り、初期費用は合計191,000円でした。内訳は以下の通りです。
・礼金(家賃1ヶ月分):35,000円
・仲介手数料(家賃1ヶ月分+消費税):38,500円
・前家賃(翌月分の家賃):35,000円
・保証会社利用料(家賃の50%):17,500円
・火災保険(2年分):15,000円
・鍵交換代など:15,000円(※任意の場合もあるので契約前に要確認)
金額の多くは家賃を基準に計算されるため、希望するエリアの家賃相場を調べれば、おおよその初期費用を把握することができます。
また、家具家電は中古や自宅の余りを活用すれば負担を抑えられます。筆者の場合、小さい冷蔵庫だけ約1万円の中古を購入し、その他の家具家電は自宅にある余りを活用しました。引っ越しについても自家用車で対応することで費用を抑えました。初期費用は避けられませんが、工夫次第で負担を抑えられます。
次に「維持にかかる毎月のランニングコスト」を整理していきます。
ランニングコスト
初期費用が一度きりの支出である一方、毎月のランニングコストこそが生活に与える影響が大きいものです。
筆者の場合、家賃と駐車場代の固定費が月35,000円、変動費の水道光熱費は週に1〜2日の使用頻度で約6,000円/月です。電気・ガスは自由化されているので、ライフスタイルに合ったプランを選ぶことで変動費を抑えられます。
例えば、使用量が少ない場合に得するプランや、電気とガスをセットで契約することで割引になるプランなど、多彩な選択肢が用意されているので比較検討してみましょう。ランニングコストを抑えることで、千葉であれば月41,000円程度で、家賃と水道光熱費を賄うことができます。これは、都心で月極駐車場を借りる程度の費用に相当します。
また、交通費と食費も考慮すべきコストです。交通費は車移動であれば、高速代や移動の負担を考慮して片道2時間以内の距離がおすすめです。食費は二拠点生活の有無にかかわらず発生するものですが、両拠点のスーパーの価格を比較しながら節約する楽しみ方もおすすめです。