はじめに

「高校無償化」が話題になる一方で、所得要件や自治体による独自制度の違いもあり、実際にどのくらい負担が軽くなるのか、分かりにくいのが現状です。

現在、公立高校の授業料相当分に対する支援だけでなく、さらに私立高校の授業料負担の支援も広がっています。大学進学まで考えると家計への負担は大きな不安の種です。「高校は公立」と思い込みがちですが、制度を知ることで私立も現実的な選択肢になり、子どもの希望と家計の両立が可能になり得ます。

本記事では、支援制度の現状と今後の動向、支援制度を踏まえた教育費全体の捉えた方について解説します。


所得制限撤廃が期待される国の無償化制度

高等学校等にかかる教育費の負担を減らすため、国と地方自治体それぞれに支援制度があります。

国の主な制度は「高等学校等就学支援金制度」です。国公私立を問わず、高等学校等の「授業料」の支援を受けることができます。生徒や保護者が直接受け取るのではなく、学校が代理で受領し、授業料にあてられます(※学校により、就学支援金の支給決定までの間授業料を徴収し、後日就学支援金相当額を還付する場合があります)。

保護者の所得と進学先の学校に応じて支援金の額が決まります。支援金の基準額は、国公立高校の年間授業料に相当する年額11万8,800円です。世帯年収が約590万円未満の世帯の子どもが私立高校等に通う場合には加算があり、支給上限額が年額39万6,000円に上がります。

これまでは所得制限により、世帯年収約910万円以上の世帯は支援の対象外でした。令和7年度に限り、「高校生等臨時支援金」として年額11万8,800円の支援を受けることができました(私立高校等の加算はなし)。

文部科学省の資料に「令和8年度からの所得制限の撤廃や私立高校等の加算額の引き上げも含めたいわゆる『高校授業料の無償化』を別途検討中です」と記載されており、今後の所得制限のない授業料無償化の実現が期待されています(※2025年10月現在、決定事項ではありません)。

私立高校の補助が広がる自治体の独自制度

国の制度に加え、独自の支援制度を設けている自治体もあります。特に私立高校の学費負担が大きい大都市圏では、手厚い支援制度が設けられています。

東京都:「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」

私立高等学校等に通う生徒と保護者の住所が、都内にある場合が対象です。国の就学支援金とあわせると、都内私立高等学校の平均授業料(48万9,000円)を上限として支援が受けられます。令和7年度においては、実質的に所得制限がなくなりました。

神奈川県:「学費補助金」

神奈川県内設置の私立高等学校等に通っており、かつ生徒・保護者等ともに県内在住の方が対象です。年収約750万円未満の世帯では、国の就学支援金とあわせた支援額は最大46万8,000円で、世帯年収約910万円未満まで段階的な補助があります。

大阪府:「高等学校等の授業料無償化制度」

全国に先駆けて、所得制限のない「授業料の完全無償化」を目指す制度を段階的に導入しています。令和8年度には、授業料無償化の対象校であれば、授業料の金額・子どもの人数・世帯年収に関わらず授業料が完全無償化となります。

このように、自治体によって制度の差が大きいため、「どこに住んでいるか」で家計の負担は大きく変わります。引っ越しや進学の選択肢を考えるご家庭では、この点も見逃せません。

制度の利用を希望する場合、原則として入学後に学校を通じて申請を行い、毎年度の申請が必須です。国と自治体の制度を利用する場合はそれぞれに申請が必要であり、期限を過ぎると受付されない点にも注意しましょう。

支援を受けられるのは年度に1回までとなるため、転校等で学校が変わった場合でも、年度1回(1校分)しか利用できません。

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