はじめに

金利上昇の潮流が強まる中、国債にも再び注目が集まり始めています。株式市場のような派手さはないものの、債券は資産を守りながら育てる“脇役の力”を発揮することがあります。

ただし、同じ「国債」であっても、日本国債と米国債では性質が大きく違います。為替、インフレ、金利変動など、これらが絡む中で、どちらを選ぶかで将来の結果は変わるかもしれません。この記事では、日本国債・米国債の特徴、そしてこれからのアメリカ金利動向を踏まえた上で、あなたにとってベストな国債の選び方をFPの視点で解説します。


日米の金利差はなぜ生まれたか?

まず押さえておきたいのが、日米間で金利に大きな差が出ている背景です。2025年10月時点で、日本の10年国債利回りはおおよそ1.7%前後。一方、アメリカでは10年債の利回りが4%台まで上がっています。

この差は、両国の金融政策、インフレ見通し、経済成長率予想などが複雑に絡み合って起こっています。日本は長年続いた低金利からの脱却を目指してようやく正常化の道を模索しつつありますが、アメリカはインフレ抑制のために高い金利を維持してきました。

数字だけを見れば「米国債の方が得では?」と思うかもしれません。しかし、投資とは表面的な数字で判断するものではありません。なぜその利回りになるのか、そしてその裏にどんなリスクが潜んでいるのかを理解しておくことが、長く資産を守るための第一歩です。

日本国債は安心できる土台だが、見逃せないインフレリスク

日本国債の魅力は、「為替変動の影響を受けない」ことにあります。私たちは普段、日本円で生活し、収入を得ています。そのため、外貨の値動きを気にせず運用できるのは大きな安心材料です。さらに、日本国債は信用度が高く、デフォルト(債務不履行)の可能性が極めて低いとみなされています。

一方で、見逃せないのが「インフレに弱い」というリスクです。日本では近年、物価上昇率が2〜3%前後で推移している一方で、10年国債の利回りは1.7%前後にとどまります。

つまり、利息を受け取っても物価上昇がそれを上回れば、実質的な購買力は目減りします。100万円を預けて1年後に1万7,000円の利息を得ても、物価が2.5%上がれば、そのお金で買えるものは少なくなってしまうわけです。

「元本保証だから安心」と思われがちですが、お金の価値そのものが変化するのがインフレの怖さです。日本国債は“安全”である一方で、“実質的なリターン”という点では注意が必要です。数字の安心感に隠れたリスクを、しっかり認識しておきましょう。

米国債は高利回りだが、為替リスクに気を付ける

米国債の10年利回りが4%台に達しているのは、FRB(連邦準備制度理事会)がインフレを抑えるために高い政策金利を維持してきたことが背景にあります。高い利息を得られること、そして世界最大の債券市場で流動性が高いことは、米国債の大きな魅力です。また、ドルが円に対して強くなる局面では、為替差益も狙えます。2022年以降の円安局面では、米国債を保有していた日本人投資家が為替の恩恵を受けたケースも多くありました。

ただし、米国債には「ドル建て資産」という性質があるため、為替変動の影響を避けることはできません。円高が進むと、利息で得たリターンが為替差損で相殺される可能性があります。一方で、円安が進めば利回り以上のリターンを得ることもあるので、為替リスクはリスクでありながら、チャンスでもあるということです。

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