はじめに

メルカリは、2025年12月をもってスポットワーク(隙間バイト)事業「メルカリ ハロ」を終了します。2024年3月に事業を開始してから、わずか1年9カ月での撤退です。この発表を受けて市場では好意的な反応が見られ、メルカリ株は翌日に一時前日比で14%上昇しました。一方、業界最大手のタイミーも5%超の株価上昇を記録し、その後も上昇傾向が続いています。

メルカリの早々の撤退は経営判断として妥当だったのか、なぜタイミーに勝てなかったのか、投資家はどう判断するべきなのか考えてみたいと思います。


メルカリ ハロ撤退の背景

メルカリは2025年夏ごろから、メルカリ ハロの売却や業務提携を複数の企業に打診していましたが、条件が合わず、最終的に撤退を決断しました。担当者は「3年かけて高尾山には登らない」と表現し、見込みの薄い事業に経営資源を投入し続けることの意味のなさを強調しました。メルカリはこれまでも、ライブコマース事業や英国事業など、収益が見込めない事業から早期に撤退しており、こうした「素早い損切り」は同社の経営スタンスの一環といえます。

実際、メルカリ ハロはサービス提供側である事業者の利用が伸びず、2025年1月時点での事業所数は約15万カ所にとどまりました。一方、タイミーは月に1件以上の求人を出している事業所数が約20万カ所と、大きく差を広げていました。サービス開始当初は、事業者をできるだけ多く獲得するため無料としていた利用料ですが、2025年4月には、給与と交通費の合算額の3割を利用料として徴収し始めたことで、導入メリットが薄れたと感じた事業者の離脱も加速。そのため収益化が十分に進まず、2024年度の通期決算でも赤字が出ており、撤退に舵を切ることとなりました。

なぜタイミーに勝てなかったのか?

敗因の一つは、営業網と現場対応力の差です。「メルカリ ハロ」は2023年3月に開始された比較的新しいサービスでしたが、すでに「タイミー」は、スキマバイトサービス市場で強固な地位を築いていました。北海道から九州まで全国に支社を展開し、自治体や農業協同組合(JA)、飲食チェーンなどと連携を深めてきました。こうした地域密着型の取り組みが、幅広い求人を生み出す源となっています。

一方、メルカリは東京・大阪のみに拠点を持ち、地方の事業者との関係構築が難しい状況でした。そのため、求人件数や働き手のマッチング機会が少なく、ユーザーは他サービスに流れる結果となりました。登録者数は1200万人と多かったものの、実際に就業したのは94万人にとどまり、タイミーの1800万人超と比べると、20分の1の水準です。

ブランドイメージのミスマッチもあります。メルカリのブランドは「フリマアプリ」や「個人の副業支援」というイメージが中心で、「即時雇用」や「労働の場」としてのイメージ定着には至っていませんでした。スキマバイトサービスは、即時の労働提供と信頼が重要な要素であり、ブランドイメージの違いが心理的なハードルとなり、利用者の掘り起こしが難しかった可能性があります。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]