はじめに
2023年に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に要請したことを受け、日本企業の間で、資本効率と株主還元のあり方を見直す動きが加速しています。
ここでいう「株主還元」とは、企業が事業活動で得た利益を、配当や自社株買いなどの方法で株主に還元することです。この流れを背景に、日本企業の株主還元は活発化しており、2026年3月期の配当総額は約20兆円と、5年連続で過去最高水準が見込まれています。さらに、自社株買いの設定総額も過去最高水準を維持しており、市場では日本企業の経営意識が「株主重視」へ変化していることが見て取れます。
配当に「自社株買い」を加えた日経新指数の登場
こうした企業側の変化は、投資家にとって新しい投資機会を生み出します。その一つが、日本経済新聞社が2025年11月4日より算出・公表を開始した新しい株価指数「日経平均株主還元株40指数」です。
この指数は、「配当利回り」だけでなく、「自社株買い」も加味した「株主還元利回り」に注目しています。日経平均株価の構成銘柄(金融・不動産を除く)のうち、株主還元利回りが高い40銘柄で構成され、年2回銘柄入れ替えが行なわれます。
入れ替えルールは、日経平均株価の構成銘柄(金融・不動産を除く)から、株主還元利回り(配当金総額と自社株買い総額の3年平均を時価総額で割った値)の高い40銘柄を選定。
算出方式は、時価総額に株主還元利回りの高さを加味する「時価総額×利回りウェート方式」を採用しています。
主な採用銘柄には、INPEX(1605)、清水建設(1803)、信越化学工業(4063)、出光興産(5019)、キヤノン(7751)、伊藤忠商事(8001)、三菱商事(8058)、日本郵船(9101)が名を連ねています。
算出開始時には39銘柄の採用にとどまりました。これは、構成銘柄であるニデック(6594)が特別注意銘柄に指定され、日経平均株価から除外されたことに伴う措置とみられます。