はじめに
「定額給付」と「報酬比例」で実現する所得再配分
では、なぜ年金には所得再分配機能があるのでしょうか。それは基礎年金の「定額部分」と厚生年金の「報酬比例部分」の組み合わせにあります。
納付期間が同じで、現役時代の給与が2倍、3倍違っても、年金受給額はそのまま2倍、3倍にはなりません。
例として、以下のような場合の年金受給額を比べてみましょう。
・会社員Aさん(40年間勤務、年収420万円)→ 65歳からの年金額約175万円
・会社員Bさん(40年間勤務、年収840万円)→ 65歳からの年金額約267万円
※実際に40年間同じ年収が続くことはありませんが、わかりやすくした数字です
年収は2倍違いますが、年金額の差は約1.5倍にとどまります。これは、基礎年金の定額給付があるため、高所得者の受給額が極端に増えず、低所得者も一定水準を確保できる仕組みになっているからです。これこそが「所得再分配」の機能です。
もちろん、高い保険料を払っている人の受給額もきちんと増えるよう、厚生年金は給与比例で設計されています。
さらに2025年の年金制度改正では、厚生年金保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」の上限が段階的に引き上げられ、高所得者の保険料が増える一方で、その分受給額も上がるようになります。
基礎年金の底上げは、ほぼ全員の年金アップにつながる
基礎年金は、低所得者にとって老後生活を支える重要な制度です。特に就職氷河期世代や非正規雇用などで所得が少ない人にとって、基礎年金の底上げは安心材料になります。
基礎年金の引き上げは、結果的にすべての人の年金を底上げすることにもつながります。厚生労働省の試算によれば、38歳以下では一部の高所得者を除き、99.9%の人が将来の年金受給額が増える見込みとされています。
年金制度には誤解や間違った情報も多いですが、私たちの老後を支える仕組みだからこそ、正しく理解する必要があると思います。老後資金は失敗できない!あなたが今からできる資産形成の始め方、お金のプロに無料で相談![by MoneyForward HOME]