はじめに
外国人が日本の不動産を取得することによる利点・懸念点
外国人が日本を取得することにより、さまざまな影響が生まれることが考えられます。ここでは、この利点と懸念点に分けて整理して考えていきたいと思います。
まず、利点としては、外国人投資は地方に新たな資金をもたらし、遊休不動産の活性化や地域の雇用創出につながる可能性があります。また、空き家や遊休地の荒廃進行を防ぎ、リノベーションや再利用によって地域産業や観光促進に寄与するケースもあります。そのほか、外国人による多様な文化や経験が地域のイノベーションを後押しし、グローバルな視点をもって地域活性化を図ることも期待できます。そのほか、先に述べたような法整備に伴い、不動産取引にかかる情報開示が進むことで、”外国人取得問題”に留まらない、公正かつ効率的な不動産取引の市場形成が促進されることも期待できます。

次に、懸念としては、特に水源林や安全保障の観点から重要とされる土地が外国資本に集中することで、資源持続可能性や国防への懸念が生じます。また、程度の差はあれ、地域における文化や慣習になじまない利用方法等により、地元住民の不安が膨らんだり、いわゆる”ご近所トラブル”が生じたりする可能性があります。
そのほか、筆者が考える最大の懸念点として、このさきの社会情勢やトレンドの変化により、外国人が所有する不動産における無管理状態が発生しやすく、地域の安全・安心確保が困難になる恐れがあります。特に、主に投資目的による短期的な利益狙いで取得された不動産は、このような問題が顕在化しやすい環境にあるといえます。その意味では、中長期的視点で考えると、遊休不動産のみならず昨今過熱している、都市部のタワーマンション等においても、徐々にこのような問題に直面する恐れがあるといえるでしょう。
国や自治体の対応と法制度

外国人の土地購入に関し、2025年4月から農地取得規制が強化され、短期在留の外国人による農地取得は禁止となり、詳細な届出義務が課されました。重要土地利用規制法の成立や森林法の改正も進み、外国人による重要土地の事前届出や利用制限が強化されています。
その他、各自治体において、水源に関する保全条例が続々と制定されており、山林を売買する取引当事者は、日本人を含め、国籍に関わらずその取引目的等を取引前に届け出ることが義務付けられるようになっています。このように、国や自治体において、地域の状況に合わせた条例制定で、取引の透明性と持続可能性を確保しようという動きが進んでいます。
持続可能な国土管理と地域活性化の未来
日本の国土は限りある重要資源の集合体であり、持続可能な利用と地域の活力増進の両立が不可欠です。
ここまで見たように、外国人取得問題は決して軽視できない課題である一方、見方を変えれば、国内のあまねく不動産の利活用を進め、資産価値を積極的に高めていき、不動産における”国際的競争力”を高めることで、これらの問題を大きく抑制できる側面もあるといえます。
このような観点も意識しながら、法整備や偏った警鐘を鳴らすだけではなく、時として行政と民間が一体となって新たな価値創造や資源管理を実現し、未来の日本の国土管理と地域再生につなげていくべきと考えられます。