はじめに
2026年の日本株相場は、日経平均株価が6万円の大台に迫ると予想されます。2025年末の日経平均が5万円程度の水準で着地すると仮定すると、20%の上昇が見込まれる計算です。この強い上昇見通しは、主に「企業業績の継続的な改善」と「日本株のバリュエーション(PER)の見直し」という二つの国内要因が、米国株の良好な外部環境と相まって推進されるためです。
1. 企業業績の向上とバリュエーションの見直し
① 稼ぐ力の向上とCGコード改訂の結実
2026年の日本株上昇の最大の根拠は、日本企業の「稼ぐ力」の向上と資本効率改善の動きが加速することにあります。
・CGコード改訂の総仕上げ
2025年はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)導入から10年の節目に当たり、2026年半ばを目途に5年ぶり3回目の改訂が議論されています。今回の改訂の核心は、金融庁の資料でも真っ先に掲げられている「稼ぐ力の向上」であり、これは10年以上前のアベノミクス成長戦略(「『日本再興戦略』改訂2014」)を起点とし、脈々と続いてきた国策ともいえる流れの集大成です。
・現金の使い方への言及
今回の改訂では、企業がため込みすぎた現金の使い方(キャピタル・アロケーション)にまで踏み込みます。現預金を投資などに有効活用できているかの検証・説明責任の明確化が検討されており、これによって日本企業の財務における特に非効率な部分の改善が期待できます。
・PBR改革の加速
CGコード改訂は、2023年3月に東証が要請した「資本コストや株価を意識した経営」(PBR改革)の延長線上にあります。この要請以降、企業の資本効率改善意識が高まり、自社株買いや増配が相次ぎ、日本株の底上げにつながっています。この不可逆的な流れが2026年にはさらに加速すると見られます。
② PER19倍の正当化
現在の日経平均の予想PERは19倍と、過去平均の15倍程度に比べると割高に見えますが、これは来期業績を織り込んでいるからという見方が一般的です。
・「実際的な」PERの穏当さ
Quick Consensusの来期予想EPS(3200円程度)で見ると、PERは過去平均並みの15〜16倍程度となり、適正な水準だと考えられます。
・評価そのものの高まり
筆者は、PERの上昇は業績の急激な下振れによるものではなく、2022年9月(東証の要請の半年前)を起点に日本株の評価が単純に見直され、水準を切り上げてきたと見ています。企業の資本効率改善、稼ぐ力の向上が進むことを背景に、現在の19倍というバリュエーションも十分に正当化されるという解釈です。