はじめに
年末年始、帰省した際に、家族や友人の口から何度も発せられたのが、物価上昇に対する愚痴でした。食費、光熱費、ガソリン代、電化製品などの耐久消費財、あらゆる物が値上げされ、辟易している様子がうかがえます。
視点を変えると、値上げしても買ってもらえるお店がある一方で、そっぽを向かれるお店もあります。実家の近所にあった個人経営のケーキ屋さんは、原材料高に耐えられず2025年末で閉店していました。価格転嫁がうまくできなかったのでしょう。昔から通っていただけに非常に残念なことです。
そんな状況下、生活必需品とは言い難い「服」にかけられるお金は減っているのではないでしょうか? コートは毎年新調しなくても困りませんし、最近は、メルカリなどで安く購入する人も増えています。原材料高や人手不足による人件費の高騰など、アパレル各社に対する逆風は、相当に強いと推測できます。
しかし意外にも、そんな逆風を「どこ吹く風」と笑い飛ばし、過去最高益を更新し続ける企業が存在します。節約志向が高まる中、安売りで勝負するのではなく、独自の戦略で、わたしたちのお財布のヒモを緩めてしまうアパレル企業はどこなのでしょうか? タイプの異なる6社を比較し、それぞれの「勝ちパターン」を投資家目線で解剖してみます。
1. 【絶対王者】ファーストリテイリング:もはや「日本の服屋」ではない
まず、アパレル株を語る上で避けて通れないのが、ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)。その強さは、日本国内の景気に左右されないところにあります。2026年8月期の通期予想では、6年連続過去最高売り上げ、最高利益を更新する見込みで、節約志向など他人事のようです。
特筆すべきは、海外ユニクロ事業の利益が国内を大きく上回っている点です。2025年8月期の実績では、国内ユニクロ事業の利益が1,871億円に対して、海外ユニクロ事業は3,090億円。2025年に訪れたニューヨークやパリなど主要都市のほとんどに大型店舗があり、カタカナロゴのショッピングバッグを持って歩く現地の人々をたくさん見かけました。昨今の円安も追い風になっており、日本人の大半が、何かしらユニクロの服を持っている状態が、世界規模で起きようとしています。
営業利益率が16%前後と、製造小売業としては驚異的な水準。「世界で安定的に稼ぐ株」を求めるなら、筆頭候補でしょう。
2. 【究極のブランド力】HUMAN MADE:値引きゼロが戦略のキモ
2025年11月に東証グロース市場に上場を果たし、投資家を驚かせたのがHUMAN MADE(456A)です。創始者・NIGO氏が手掛けるこのブランドは、ユニクロとは真逆の「超・希少性」戦略をとっています。
この会社の最大の特徴は、いっさい値下げをしないこと。通常のアパレルは、シーズン末にセールを行いますが、HUMAN MADEにその概念はありません。広告も一般的な手法は使わず、自社運用のSNSや、世界的なセレブとのコラボを通じて独自の世界観を発信。これにより熱烈なファンを創出し、1枚1万円以上のTシャツでも難なく売れてしまうのです。
原材料費が高騰しても、ファンは価格を気にせず購入します。「価格決定権」を企業が握っているかどうかがインフレ時代の投資判断の分かれ目。営業利益率30%超えという数字が、その強固な支配力を証明しています。
3. 【デフレの番人】しまむら・西松屋:節約志向の「受け皿」
「安くなければ買わない」という層をがっちり掴んでいるのが、しまむら(8227)と西松屋チェーン(7545)です。
しまむらは「在庫管理の鬼」。自社で物流網を持ち、売れ残りを極限まで減らし、低価格ながら着実に利益を出す構造を築いています。一方の西松屋チェーンは、徹底したセルフサービス化とガラガラの店内(=人件費抑制)で、育児世代のインフラとなっています。
両社とも「生活必需品」に近い立ち位置で、不況になると消費者が百貨店から流れてくるため、実は景気後退に強い「ディフェンシブ株」の側面を持ちます。今のようなインフレ下では、その安さが強力な武器になります。
直近の「既存店売上高」に注目。12月は暖冬の影響で客単価が下がり売上高は微減(しまむら97.8%、西松屋96.7%)しましたが、客数は両社とも前年超えを維持しています。「やっぱりここが一番安い」という信頼が揺らいでいないか、今後の動向が注目されます。