はじめに

1月5日に全国公開となる新春映画『嘘八百』。大阪・堺を舞台に、“幻の利休の茶器”をめぐり、中井貴一さんが演じる冴えない古物商と佐々木蔵之介さんが演じる落ちぶれた陶芸家がタッグを組んで、一攫千金を狙い、騙し合いを繰り広げる大人向けエンターテインメントコメディです。

『百円の恋』で日本アカデミー賞優秀作品賞と最優秀脚本賞を受賞した、武正晴監督と脚本家・足立紳さんの2人が再びタッグを組み、さらにNHK連続テレビ小説などでも活躍する脚本家の今井雅子さんが加わりました。

偽物を作るために一世一代の勝負をかける陶芸家に、古物商がかけた「贋物よりすごい本物を作ってやれ」という印象的な言葉。作品を通して描かれている「モノの価値とは何なのか」というテーマについて、武監督に話を聞きました。


大事にする人がいるから価値がある

――『嘘八百』はプロデューサーから声をかけられたところから話が始まったそうですが、企画のどういうところに魅力を感じて、引き受けられたのでしょうか。

オリジナルでイチから話を作っていいということと、バディムービー(2人組を主人公に据えた映画)にしてほしいと言われたので、だったら面白いなと。詐欺師まではいかないけど、フェイクムービーにしたいと考えていました。骨董や古美術を扱った贋作ものは、映画のジャンルとしても面白いと思っていました。

関西の話は関西弁が難しいという面はありますが、今までの撮影もよく関西でやってきたので、面白くできると感じていました。中でも歴史もあり、小説や大河ドラマなどにもよく登場する堺を舞台に撮影できるのが面白いと思いました。

武正晴(たけ・まさはる)
1967年生まれ。2006年短編映画『夏美のなつ いちばんきれいな夕日』の後、2007年『ボーイ・ミーツ・プサン』で長編映画デビュー。2014年公開の『百円の恋』は日本アカデミー賞など数々の映画賞を受賞、第88回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表作品としてエントリーされる

――今回の作品はタイトなスケジュールで撮影されたそうですね。それが作品の疾走感につながっていたように感じました。

どうでしょう? 結果として、そういう風に観ていただければいいのですが、その逆もあると思います。自分としては反省だらけです。数十年残り続ける映画というのは、きっちり撮っています。この映画がどういう形で残っていくかはわからないですが、消耗品にはなってほしくないです。

映画は何年経っても、「もう1回観たい」とか、「どこかの劇場で上映しよう」とか、骨董と一緒で、でき上がったものを大事にしていく人がいるから価値が出ます。そういう人たちがいることの価値のほうが大きいと感じています。自分が生まれる前に作られた映画を今でも観られるのは、その作品を評価し、後世に残したいと思う人がいたからです。

骨董や美術も、400~500年前から、それを守ってきた人がいます。今、僕らは簡単に捨ててしまうじゃないですか。これを捨てないで、箱も帯も中の布も含めて、ずっと取っておいた人がいる。それを大事にする人の心に一番価値があります。そして、そう思わせるものを作った人にも価値があるんです。それが今回の作品を作る中で学んだことですね。