はじめに
育休からの復帰を前に、時短勤務にするかどうか、復帰のタイミングはいつにするのかなど、決めることはたくさんあります。
多くの方が気にしているのは、仕事と家庭のバランスや体力的な負担です。一方で、意外と盲点になりがちなのが「復帰後の手取り」です。単純に「働いた分だけ増える」わけではなく、給与から差し引かれる社会保険料や税金によって、想定より手取りが少なくなるケースがあります。
この記事では、復帰日や働き方を選ぶ前に知っておきたい、育休復帰に関わる社会保険料の仕組みや、手取り減への対策を解説します。
育休復帰した月にだけ起こること
社会保険料は、日割りで計算されるものではなく、月単位で決まります。ここで知っておきたいのが「復帰日の前日が属する月まで」が免除対象になるというルールです。つまり、月の途中から復帰した場合でも、その月は1か月分の社会保険料が発生します。例えば、4月30日に復帰すると、4月分から保険料が発生しますが、1日ずらして5月1日に復帰をした場合、4月分の保険料は免除されます。
あわせて注意したいのが、育休復帰時に、時短勤務や出勤日数の減少によって給与が下がるケースです。給与は実際に働いた日数や時間に応じて支払われる一方で、社会保険料は「1か月分」が通常どおり発生するため、手取り額が減る可能性があります。特に、時給や日給で働く方は、この差を実感しやすくなるため、社会保険料の負担を考慮する場合、月初の復帰がおすすめです。
復帰後から数か月の間に起こること
社会保険料は、毎月の給与額そのものではなく、毎年4月〜6月の給与をもとに決定される標準報酬月額をもとに計算されます。通常はこの基準が1年間適用され、時短勤務などで給与が下がった場合でも、この基準はすぐには切り替わりません。
育休復帰時は、原則として、復帰後の給与が一定期間そろってから見直され、復帰後3か月分の給与をもとに再計算されます(実際のタイミングは会社の手続き状況などにより前後することもあります)。そのため、復帰直後の数ヶ月間は、育休に入る前の高い基準のまま保険料が発生します。社会保険料が実態に近い水準に変わるのは、復帰から4か月以降になるケースが一般的です。
育休復帰後に関わる2つの制度
育休復帰後には、標準報酬月額に関わる制度が複数ありますが、それぞれの役割は異なります。この違いを押さえておくことで、復帰後の手取りや将来への影響を切り分けて考えやすくなります。
①復帰後の手取りに影響する制度
育休明けに時短勤務などで給与が下がった場合、社会保険料の計算基準を実態に近づけるための手続きがあります。会社を通じて提出する「育児休業等終了時報酬月額変更届」で、復帰後の給与をもとに標準報酬月額を見直すものです。
この手続きが行われると、給与の水準に合わせて社会保険料も下がるため、毎月の手取りは増えます。一方で、傷病手当金や出産手当金などの給付額は下がった金額をもとに計算される点には注意が必要です。
②将来の年金額に影響する制度
育休復帰後、時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合でも、その影響が将来の年金額に反映されないように配慮された制度があります。「養育期間標準報酬月額特例」と呼ばれるもので、子どもが3歳に達するまでの養育期間中が対象となります。年金の計算上、養育前の標準報酬月額をもとに扱われ、男女ともに対象です。
この制度は、育児期の働き方の変化が、そのまま将来の年金額の差につながらないようにするための仕組みです。自動で適用されるものではなく、申請が必要です。