はじめに

年末年始、久しぶりに実家へ帰省した際、親の歩き方が少し不安定になっていたり、冷蔵庫を開けると中身が同じ食材であふれていたり…。そんな些細な変化に「おや?」と胸がざわついた経験はないでしょうか。

電話の声だけでは決して気づくことのできない、目に見える「老い」のサイン。これは、30代から60代という幅広い世代にとって、避けては通れない「プレ介護期(介護準備期)」の始まりを告げる合図かもしれません。

多くの人は、実際に倒れたり入院したりしてから慌てて動き出しますが、それでは遅すぎるのが家計管理の現実です。今回は、親が自立して暮らせている今こそ手をつけるべきポイントを解説します。


「3人に1人」が直面する認知機能低下を現実視する

久しぶりに帰省した際、親の様子に「急に年をとったな」と、言葉にできない違和感を覚えたことはないでしょうか。親はまだ元気で、認知症なんて無縁だと思っていても、老いは静かに確実に進行しています。

特に一人暮らしの親を持つ子世代にとって、親の生活を守ることは切実な問題です。銀行で日々の生活費を下ろす行為は、親の暮らしを支える命綱に他なりません。

ただ、金融機関は本人の判断能力が不十分とみなされた場合、資産を守るために口座の入出金を制限(いわゆる口座凍結)することがあります。これは本来、第三者による不正利用を防ぎ、親の財産を守るための仕組みです。

しかし、ひとたび制限がかかれば、たとえ実の子であっても親の口座から生活費を引き出したり、介護費の捻出を目的として実家を売却したりすることが法的に困難になります。結果として、親の介護費用を子供が立て替えざるを得なくなるなど、家族全体の家計を圧迫する事態を招きかねません。

65歳以上の高齢者を対象にした調査では、3人に1人が認知機能に何らかの症状を抱えているという時代を迎えています。

しかも、認知症・軽度認知障害者の金融資産額は、2023年度末時点で約294.3兆円でしたが、2035年度末には473.7兆円に達すると試算されています。これほど多額の資産が「凍結」の危機にさらされている事実は、もはや特定の家庭の問題ではなく、社会全体の課題といえます。

親が判断能力を失う前に準備をしておくことで、親自身の尊厳を守り、子供の負担を軽減させることが可能です。そこで、まず着手したいのが、金融情報の可視化と代理人などの手続きです。

「お金の話」の前に「情報の棚卸し」

いきなり資産額を聞くのではなく、「最近は特殊詐欺が増えているから、防犯のために口座を整理しよう」「もしもの時に私が手続きを代行できるようにしておきたい」という切り口で、どの金融機関を、どのように使用しているのかを確認してみてください。あまりにも金融機関が多い場合は、メイン口座への集約が必要になる場合もあります。

また、意外と見落としがちなのが「固定費」の把握です。使っていないクレジットカードの年会費や、現在は不要になった古い生命保険の保険料など、親自身が忘れている「静かな支出」を整理するだけで、将来の介護資金に回せる余裕が生まれます。

いざという時のための代理人手続き

ある程度、親のお金周りの棚卸しができたら、次にどのように管理していくかを検討します。

最も手軽で、今すぐ検討できるのが銀行独自のサービスです。多くの銀行では、本人が元気なうちに手続きをすることで、家族が本人の代わりに預金を引き出せる「代理人カード」を発行できます。

しかし、これには注意点があります。代理人カードはあくまで「ATMでの出し入れ」を想定したものであり、定期預金の解約や住所変更といった重要な手続きまではカバーできないケースが大半です。

そこで注目したいのが、近年多くの金融機関が導入している「予約型の代理人指名制度」です。これは、本人が元気なうちに「将来、判断能力が低下した際の代理人」を指定しておく仕組みです。金融機関により制限の範囲は違いますが、円預金の入出金・解約、運用性商品の売却や解約、住所変更等のお届け、残高証明書発行の手続き等が可能になります。

この制度を利用すれば、将来、診断書等で判断能力の低下が証明された際、指定された家族が正式に窓口で手続きを行えるようになります。手数料も無料、あるいは安価なケースが多く、第一歩として非常に有効な手段です。

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