はじめに

2月8日に行われた衆議院解散総選挙では、自民党が単独で3分の2超の議席を獲得するなど圧勝しました。これによって、株式市場では主に高市政権の政策への期待から株高が進行。また、ドル/円相場が一時大きく円高に振れるなど、為替市場にも大きな影響を与えています。

このように、大きなイベントや経済事象は金融市場を大きく動かす力を持っています。今回は、2026年に実施が予定されている、あるいは発生の可能性が高いイベントや事象について、現状の動向と、そのイベントや事象がもたらす結果を考察。あらかじめそれらを知り、自らの投資戦略に活用しましょう。


「4月利上げ」の線は薄い?

【日銀利上げ】
2025年、日銀は1月と12月の2度にわたって利上げを実施しました。具体的には、金融機関同士が超短期で資金のやり取りを行う際の金利(無担保コールレート)の誘導目標を0.25%→0.5%(1月)、0.5%→0.75%(12月)への引き上げです。この利上げを背景に、短期金利、長期金利とも上昇傾向が強まりました。企業への貸出金利や住宅ローン金利が上昇するなど、実体経済にも影響が出ています。

直近のインタビューで、植田和男日銀総裁は「これまで実施した利上げの影響を細やかに点検し、今後も経済や物価の動向に応じて利上げを継続していく」との考えを明らかにしています。追加利上げの回数や時期についてはさまざまな意見が出ており、市場では「中立金利の下限付近までは上げるだろう」との見方が支配的です。

日銀は、景気が過熱したら金利を上げ、景気が悪化したら金利を下げることで、景気や雇用、物価をコントロールする役割を担っています。「中立金利」とは、景気を良くも悪くもしない金利水準のこと。現状、日銀は中立金利に対する見方や着地点を明らかにしていません。「1%超」と推測する金融機関もあれば、「2.5%程度」と試算する調査機関もありますが、「現状の政策金利は、まだ中立金利と開きがある」という点については一致しています。つまり、リーマンショックや感染症のパンデミックのような非常事態が発生しない限り、日銀が追加利上げに踏み切るのは確実な情勢と言っていいでしょう。

植田総裁の「経済や物価の動向に応じて」という発言からもわかるように、現時点で利上げのタイミングや回数を正確に予測するのはかなり困難です。ただ、ここまでの言動から、植田総裁が利上げに関して「企業の賃上げ動向」を重視していることは明らか。そう考えると、3月の「春闘」で企業の賃上げ姿勢が鮮明となれば、4月27日、28日の金融政策決定会合に向けて、追加利上げについての議論が熱気を帯びそうです。

一部で「高市首相が植田総裁との会談で追加利上げに難色を示した」などと報道されたことに加え、政府が提出した日銀審議委員のメンバー入れ替えの人事案で、金融緩和と積極財政を容認する「リフレ派」の人物が提出されたこともあり、「4月に利上げが行われる可能性は低い」との見方が浮上しています。いずれにしても、3月の春闘の結果と、4月の金融政策決定会合に向けた日銀の動きは要注目です。

ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”

【為替介入】
日銀の利上げと合わせて注目したいのが、財務省による「為替介入」です。為替介入とは、急激な為替相場の変動に対して、行き過ぎた円高を止めるなら「円売り・ドル買い」、円安を止めるなら「円買い・ドル売り」を行うこと。原資は財務省の「外国為替資金特別会計(外為特会)」です。直近では、2024年の4月~5月に約9.7兆円、同年7月~9月に約5.5兆円の円買い・ドル売り介入が行われました。ただ、過去のケースを見ると、日本単独による為替介入では、為替相場の中長期的なトレンドを変えるまでには至っていません。

2026年1月下旬、「日銀と米金融当局がレートチェックを行った」との報道が金融市場を駆け巡りました。「レートチェック」は、中央銀行が主要な金融機関に対して為替相場の照会を行うことで、“為替介入の準備段階”と言われています。注目は、今回のレートチェックが日銀だけではなく、ほぼ同時に米国側も財務長官のベッセント氏が主導する形で行っていたこと。先ほど、「日本単独による介入では効果は薄い」と述べましたが、日・米が同時に介入を行う「協調介入」となれば、話は変わってきます。

協調介入の例として最も有名なのが、1985年のプラザ合意でしょう。米国、英国、西独、フランス、日本5カ国の財務相と中央銀行総裁が、ドル高を是正するために米プラザホテルに集まり、各国が協調してドル売り・自国通貨買いを実施することで合意しました。このプラザ合意直後から、ドル/円相場は1ドル230円台から、翌年には150円台まで円高が進行。為替相場のトレンドが劇的に変わったわけです。

今回、米国側もレートチェックを行ったと判明したことで、金融市場は一時「日米の協調介入が実施されるかも!」との見方が噴出し、ドル/円相場は一時的に大きく円高に振れました。しかし、その後、ベッセント財務長官が「米国は“強いドル”政策を堅持しており、(円安を是正するための為替介入は)断じてない」と述べ、足元では日米協調介入の可能性が低いことが判明すると、為替相場では再びじりじりと円安ドル高が進んでいます。

今回のケースを通して、為替市場では「日本のドル円防衛ラインは1ドル=160円」「160円を超えても円安が続くようなら、少なくとも日本側は為替介入を実施する」という認識が広がりました。この記事を書いている2月末現在、ドル/円は1ドル=156円程度で推移しています。もし今後、1ドル=160円に接近する局面が訪れれば、再び為替介入が取り沙汰されるようになるでしょう。この場合、ポイントは「日本単独ではなく、米国との協調介入になるか」になりそうです。

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