はじめに
中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ

【トランプ関税と米中間選挙】
2025年、世界各国を混乱の渦に陥れた「トランプ関税」。2月20日、米国の最高裁判所はトランプ関税のベースである国際緊急経済権限法(IEEPA)による関税措置を「違法」とする判決を下しました。最高裁は徴収された推計1750億ドルの関税の返還方法には言及していませんが、2月24日以降、IEEPAを根拠にした関税徴収ができなくなります。
そこでトランプ大統領は、今度は「法律が『根本的な国際収支問題』と定める状況に直面した場合、大統領が関税を課す権限を与える」とする通商法122条を持ち出し、世界各国に10~15%の関税を課す制度を発動。この通商法122条を元にした「新トランプ関税」には、これまでのトランプ関税とは明確に違う点があります。それは、「関税率の上限が15%」であること、「適用期間が最長で150日」であること、150日を過ぎると、「その関税を維持するのに議会の承認が必要」なことの3つ。同関税がスタートしたのは2月24日なので、これに「最長150日」を当てはめると、同関税の期限は2026年7月24日です。
2026年は、6月11日からFIFAワールドカップ2026の本大会グループステージがスタートし、決勝は7月19日を予定しています。世界は、サッカーワールドカップ決勝の熱狂冷めやらぬ中で新トランプ関税の期限を迎えることになりそうです。当然、トランプ大統領は期限前に別の手を打ち出してくると予想されますが、足元で行われている日本の特別国会の会期は7月17日まで。会期が延長されない限り、トランプ大統領の“次の一手”に対して、国会審議が必要な対策は講じられないでしょう。
最高裁の判決後、トランプ大統領は自らのSNSで「最高裁は、ほかにも数多くの関税を承認している」「当初の関税よりも、はるかに強力かつ不快な方法で、法的な確実性をもってそれらを活用できる」と投稿しています。この投稿や、トランプ大統領のこれまでの言動を踏まえると、期限後もあらゆる手を駆使して関税を徴収する方法を取ってくることが予想されます。
米国は、2026年11月3日に中間選挙を控えています。トランプ大統領の支持率が過去最低レベルにまで下がっていることを考えると、トランプ大統領はこの選挙に向けて、米国にとってプラスと考える政策をがむしゃらに打ってくるでしょう。
2026年も、世界は「新トランプ関税」という不確実性の嵐に巻き込まれることは間違いなさそうです。
対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大
【日本の対米投資】

2025年10月下旬のトランプ大統領の訪日時、日米政府は共同で日米間の投資に関する計画を発表しました。今月17日、トランプ大統領はその第一弾として「データセンター向けの天然ガス火力発電」と「原油輸出インフラ」、「人工ダイヤモンド製造施設」の3プロジェクトを発表。ガス発電所の事業規模は約330億ドル(約5兆1150億円)、原油輸出施設は21億ドル(同3255億円)、人工ダイヤは6億ドル(930億円)となる見込みです。
日本の株式市場では、第一弾に関連する銘柄が物色される一方、次世代原発の建設など第二弾以降のプロジェクトを予想して、先回り買いをする動きも見られます。前述したように、米国は11月に中間選挙を予定しており、現時点で旗色が悪いトランプ大統領は、中間選挙に向けて関税以外で支持率を上げようと、あの手この手を打ってくることが予想されます。日本の「5500億ドル(約85兆円)規模の対米投資」もそのひとつに含まれるでしょう。その点で、今後は第二弾以降の具体的なプロジェクトが矢継ぎ早に打ち出される可能性が高いと思われます。
対米投資に関しては、「日米投資に関する共同ファクトシート」にプロジェクトの事業規模やプロジェクトに関心を寄せる企業名が公表されているので、個人投資家であれば一度目を通しておくべきでしょう。休みの日に、ファクトシートを読み込んで「次はこのテーマ、銘柄が来るはず」などと、あれこれ考えを巡らせてみてはいかがでしょうか。