はじめに

非課税制度としてNISAやiDeCoへの関心が高まっていますが、ふるさと納税や個人年金保険でも同様の節税効果が得られると思っている方も少なくありません。今回は会社員の節税を整理し解説します。


「会社員は節税できない」という思い込み

「会社員は節税できない」と耳にすることがあります。自営業者や経営者が「経費」を自由に使って節税をしているというイメージが強いのか、会社員は税金面で不利だと言う方もいます。

確かに、会社員の給与からは源泉徴収で税金が差し引かれ、年末調整で税額がほぼ確定します。自由に経費を使うこともできません。こうした仕組みを見れば、「会社員は節税できない」というイメージが広がるのも無理はないでしょう。

しかし、実際には会社員でもできることはあります。しかも、その多くは制度としてすでに用意されているものです。重要なのは、税金の仕組みを理解したうえで、利用できる制度を漏れなく使うことです。

「給与所得控除」は領収書不要の経費

まず基本となるのは「控除」です。日本の所得税は、収入から一定の控除を差し引いた「課税所得」に税率を掛けて計算されます。つまり控除を使うことで課税所得が減り、税金も少なくなる仕組みです。

給与所得は、給与の12ヶ月分と年間の賞与を合算した年収から「給与所得控除」を差し引いて求めます。この給与所得控除は、年収によって自動的に計算される「みなし経費」です。

年収190万円までは一律65万円が経費として控除され、それ以上の年収については段階的に給与所得控除額が引き上げられていきます。

例えば年収600万円の場合、給与所得控除は164万円です。年収の3割近くを通勤に必要なスーツや靴、バッグなどの購入に充てる人はなかなかいないと思いますが、会社員であれば自動的に164万円を領収書不要の経費とみなしてくれるのです。

個人の事情により利用できる控除としては、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、寄附金控除などがあります。これらの控除は、年末調整や確定申告を通じて適切に申告することが節税に繋がります。

ふるさと納税は、寄付金控除の一種ですが、一定の条件を満たした公益性の高い団体に行った寄付が控除として認められるものとは異なり、税金が減るというよりも、将来支払う住民税などを前払いする仕組みです。実質的な自己負担は2,000円で返礼品を受け取れる制度と理解するとよいでしょう。

配偶者控除や扶養控除は、家族の有無や年齢、働き方などによって異なるため、「節税」目的で行われるものではありません。最近はいわゆる年収の壁改革によって、税金の「扶養」と、社会保険上の「扶養」の条件に変化がありましたので情報をアップデートする必要があります。

ここまでのところ、会社員が積極的に「節税」のために利用できる控除には限界があると言えるでしょう。だからこそ上手に使いたいのが、老後資金づくりと節税を兼ねた制度です。

iDeCoと個人年金保険、節税効果の差

その代表例がiDeCo(個人型確定拠出年金)です。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象になります。例えば年収800万円の会社員が掛金の拠出上限である年間27万6000円を拠出すると、所得税と住民税を合わせて8万3000円程度の節税効果が期待できます。(下表参照)さらに運用益も非課税で、受け取る際にも税制優遇があるので、会社員にとって非常に有効な選択肢といえるでしょう。

企業型確定拠出年金(企業型DC)がある会社では、マッチング拠出などを利用することで同様の効果を得られます。もれなく活用するためにも会社の制度を確認しておくことも重要です。

ここでよく勘違いされるのが、同様の「老後資金作りと節税を兼ねた制度」としての個人年金保険です。こちらも、将来のために積み立てる保険料が生命保険料控除として適用されるため節税効果が得られます。

しかし、iDeCoの掛金が全額所得控除となるのに対し、個人年金保険の保険料の控除として認められる金額には、所得税は最高で40,000円、住民税では28,000円と上限が設定されています。

以下、年収800万円の会社員の節税対策を取る前、iDeCoで年間27万6,000円の拠出をした場合、個人年金保険の年間保険料27万6,000円の拠出をした場合の所得税と住民税を比較してみました。

分かりやすくするために、控除は最低限のものだけを利用した概算ではありますが、負担する税金額の違いを理解していただけるでしょう。

iDeCoが良いのか、個人年金保険が良いのかは、目的(保障・確実性)によって選択は変わりますが、純粋な節税効果だけで見ればiDeCoの優位性は明らかです。

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