はじめに
相続した土地について、「遠方にあって使う予定がない」、「売りに出しても買い手がつきそうにない」という悩みを持っている人が急速に増えています。
特に、地方の畑や山林、利用見込みのない宅地などについては、固定資産税や草木の管理負担だけが重くのしかかり、利活用や売却の見通しも立たずに万策尽きて放置しているものの、「この状況が続いたら、いずれ子・孫世代へ負担を押し付けてしまうだけではないか」と感じている人も少なくありません。
こうした状況を受けて、2023年にスタートしたのが「相続土地国庫帰属制度」です。この制度は、おおまかに言えば「相続した不要な土地を、国が有料で引き取ってくれる」制度です。この制度については、筆者が過去にも記事として何度か紹介していますが、誰でも、どんな土地でも簡単に承認されるわけではなく、そもそも申請できない土地や申請しても不承認になりやすい土地も存在します。
制度の運用開始から約3年が経過した今、いろいろな傾向が見えてきました。そこでこの記事では、制度の仕組みと最新の統計を整理したうえで、どんな不動産は承認されやすいのか/されにくいのかといった点を中心に、利用にあたっての注意点を紹介します。
相続土地国庫帰属制度とは何か
まず、本制度の概要を簡潔に整理したいと思います。
制度創設の背景と目的
日本国内では、相続や所有者の転居などがあったものの、それに伴う相続登記や住所変更登記がなされないまま時間が経過してしまい、現所有者となる人の行方が分からなくなり、管理実態もない「所有者不明土地」が増加してきました。これは、このような手続きが必要であることを知らない、うっかり手続き忘れになってしまったケースも一定数あると予想されます。
しかし、特に利用価値を見出されていない不動産は、その所有者や相続人にとって、わざわざ手続きをする意識が芽生えにくいこともあり、結果として必要な手続きをしないままになっているケースも相当数あると考えられています。
所有者不明土地が増えると、公共事業の用地取得が進まない、災害時に危険な崖や斜面の対策が遅れる、地域の土地利用計画が立てにくくなるなど、さまざまな社会的弊害が生じます。そこで国は、これまで義務ではなかった相続登記手続きを義務化し、罰則規定も新設してこれら弊害の対策を推進しています。
この義務化により、本当は相続したくない不動産を相続するケースがさらに増えていくという予想から、一定の要件のもとで国が引き取る仕組みを用意したことが、この制度の設立背景です。正式には「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく制度であり、相続や遺贈によって土地を取得した人が、条件を満たした場合に限り、国(国庫)へ所有権を移転できる仕組みといえます。
誰が利用できるのか
申請できるのは、「相続または遺贈により土地の所有権を取得した人」です。売買や贈与など、通常の取引で土地を取得した本人が制度を利用することはできず、あくまで「相続で引き継いだ土地を手放す」ための制度という位置づけになります。
引き取ってもらえない土地は?

どのような不動産でも制度を利用できるわけではなく、いくつかの審査基準があります。引き取ってもらえない土地の主な条件を挙げると、以下のとおりです。
・建物や動産が残っている土地(空き家など)
・担保権等が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地、敷地範囲等について争いがある土地
・一定の勾配・高さの崖がある土地
したがって、該当者の多いであろう空き家所有者は、予め自費で解体し、更地にしてからでないと、この制度は利用できません。また、例えば山林の所有者にとっても、住宅地と違って境界が決まっていない、一定の勾配や崖がある山林が大半であることからも、この制度を利用できない可能性があります。
そのため、この概要をみるだけでも、相続した不要な土地を処分したいという所有者のあらゆるニーズには、制度だけでは応えきれない側面があることがわかります。