はじめに
「意外と高い?」最新統計から見る承認率

法務省が2026年2月28日時点で公表している統計を見ると、申請件数5,140件に対し、帰属件数(承認)が2,542件、却下・不承認が159件、取下げ940件となっています。申請全体の約49%が承認されている計算になります。
一見すると、先に挙げたような制度を利用するための基準の厳しさにしては、承認率が高いようにもみえますが、これは申請・承認基準の厳しさから、そもそも申請自体を諦めている人や、申請窓口である法務局に相談したものの、承認見込みがないと断念した人が相当数存在するものと予想されます。
なお、土地の種類別では、田・畑2,000件、宅地1,788件、山林792件となっています。ここから考察できることとして、勾配や崖がなく、境界争いが生じにくい農地の帰属件数が多く、この制度との相性の高さが分かります。また、宅地の制度利用も多いことから、「不動産会社などに依頼して売却すれば、わざわざ制度利用しなくてもよいのでは?」とも思えてしまいますが、実際には古い住宅街などで狭い路地にしか接していない建築不可の宅地や、空き家を解体した過疎地の宅地など、一般的な不動産流通が見込めない土地が一定数を占めているものと予想されます。
費用と所要期間は、ある程度の覚悟が必要
この制度の流れは、まずは審査申請をし、審査が通過した後に負担金を支払い、手放したい土地が国に帰属する(国の名義になる)という流れになります。
制度利用にかかる費用は、まずは審査申請の時点で、1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。もし、審査に通過しなかった場合でも手数料の返還はされません。
審査を通過した後は、原則として1箇所あたり20万円の負担金がかかります。ただし、住宅地が形成されているような市街化区域内の土地や山林の土地などは、一律額ではなく、所定の算定式で計算された金額が負担金となり、特に宅地は高額になる傾向にあります。例えば、市街化区域内にある500㎡の宅地の場合は、145.4万円の負担金となります。
このことから、例えば地方部において時々ある「山林の土地を100筆手放したい」場合には、審査手数料だけで140万円になってしまいますし、万一審査却下された場合には返還されないというリスクを伴う申請となります。また、審査通過後においても、一体の土地でなく複数箇所に点在しているような場合には、「箇所数×20万円」の負担金を伴うため、所有状態によっては、かなり高額な支出を伴う可能性もあります。もちろん、その申請のために空き家の解体や境界確定のための測量作業等を依頼すれば、その費用もさらに所有者の負担として発生してしまうことになります。
また、申請にあたっては、対象地の状況が分かる公的書類や現地写真、所定の申請書など、多くの書類を準備する必要があります。行政手続きに不慣れな所有者にとっては、すべて自力で書類を準備することは難しく、司法書士などの専門家に依頼している人も多数いらっしゃるようです。申請から審査通過、帰属に至るまでには、半年から1年程度所要しているケースもあり、所要期間としても、ある程度の心の余裕と覚悟をもって取り組む必要のある手続きといえます。
負担とリスクからの解放
土地保有中は、たとえ使用していなくとも固定資産税や維持管理にかかる諸経費が続き、雑草繁茂や倒木加害、不法投棄被害、災害リスクなども負い続けます。その土地が遠方にある場合には、予防的な管理が不十分になりがちであったり、近隣苦情等に迅速に対応できなかったりと、悪意がなくとも歯がゆい状況に置かれてしまうことも少なくありません。
相続土地国庫帰属制度では、これらの負担やリスクから解放され、子どもや孫の代にそれらを押し付けてしまうような事態も防げます。市場で売れにくい土地処分の「最後の選択肢」として機能しているともいえます。
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