はじめに
2026年4月から「子ども・子育て支援金制度」が始まります。少子化対策の財源を確保するため、公的医療保険料に上乗せして徴収される新たな仕組みで、会社員なら給与から天引き、自営業者は国民健康保険料に反映されます。
「独身税」という言葉も広まりましたが、実際には子どもの有無に関係なく、公的医療保険に加入する人が広く負担する制度です。
ここで最も気になるのは「結局いくら負担が増えるのか」という点ではないでしょうか。今回は年収500〜600万円の会社員世帯を例に、負担額の目安と制度のポイントを整理します。
子ども・子育て支援金とは? 制度の背景と経緯
この制度は、政府が2023年末に策定した「こども未来戦略」の一環として創設されました。日本の出生数は2024年に初めて70万人台を下回り、少子化の加速が社会問題として改めて注目を集めています。政府はこうした状況を「静かな有事」と位置づけ、子育て支援策の抜本的な拡充に乗り出しました。
具体的には、児童手当の所得制限撤廃・高校生年代への支給拡大・第3子以降の支給額増額(月3万円)といった給付の拡充が先行して実施されています。さらに、出産費用の保険適用や保育所の整備、育児休業給付の拡充なども計画・実施されており、これらを恒久的に維持するための財源が必要とされました。
従来、子育て支援策の財源は税金と社会保険料で賄われてきましたが、財政悪化が続く中でさらなる国債発行や増税には慎重な声も多く、公的医療保険の仕組みを活用した新たな財源確保策として「支援金制度」が設けられました。名称に「支援金」とありますが、法律上は改正子ども・子育て支援法に基づくもので、強制徴収される点では社会保険料と実質的に同じ性質を持ちます。
2026年度から徴収が始まり、2027年度・2028年度と段階的に引き上げられ、2028年度に満額となる予定です。全体の規模は年間約1兆円とされており、既存の少子化対策予算と合わせて「こども・子育て予算の拡充」を目指すとしています。
会社員・自営業・高齢者すべてが対象
対象となるのは、公的医療保険に加入しているすべての人です。会社員や公務員は、協会けんぽや健康保険組合を通じて給与から天引きされます。企業も保険料を折半負担するため、勤務先にも一定の負担が生じます。自営業やフリーランスなど国民健康保険の加入者は、自治体が徴収する保険料に上乗せされる形です。後期高齢者医療制度の加入者も対象となるため、高齢世代も負担に加わります。
「独身税」と呼ばれたことで、子どもがいない人だけに新たな負担が生じるような印象を持った方もいるかもしれませんが、制度上はそうではありません。子どもの有無に関係なく、社会全体で少子化対策を支える仕組みです。
【試算】年収500〜600万円世帯の負担額はいくら?
会社員の場合、負担額は年収そのものではなく「標準報酬月額」に応じて決まります。こども家庭庁が公表している試算(2025年)をもとにすると、2026年度の負担目安は以下のとおりです。
・年収500万円:月500円程度(年間6,000円)
・年収600万円:月600円程度(年間7,200円)
一見小さく見える金額ですが、給与天引きで固定的に増えるため、手取り減少として積み重なりやすい支出です。昇給しても手取りがなかなか増えないと感じる背景には、こうした社会保険料の増加が影響していることもあります。
・共働き世帯の場合
共働き世帯では夫婦それぞれに負担が発生するため、世帯全体の負担はより大きくなります。たとえば夫婦ともに年収500万円前後なら、世帯合計で年間12,000円程度の負担になる見込みです。扶養に入っているパートナーがいる世帯は片方のみの負担となりますが、共働きが一般的になっている現在では、世帯単位での試算が重要です。
・自営業やフリーランスの場合
国民健康保険加入者の場合、保険料は所得や自治体によって異なるため、会社員と単純な比較はできません。ただし、企業の折半負担がない分、所得水準が同じでも会社員よりも実質的な負担感が重くなるケースがあります。自営業者や個人事業主は、確定申告の際に保険料の変化を確認しておくことが大切です。
2028年度の満額時には、上記の試算よりも1〜2割程度増える可能性があるため、中長期での家計への影響も念頭に置いておきましょう。