はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
投資についての相談です。私は年収1,200万円の外資系サラリーマンです。円ベースの流動資産は300万円ほど、米ドルの持株で300万円。私と妻の終身保険は合計1万2,000米ドル(年利5.5%の解約返戻金)。不動産資産として都内のアパートを一棟4室、都内の区分マンションを2室所有しています。
過去に国内株にも投資したことがありますが、50万円ほどの損失を出しました。また、“和牛商法”と呼ばれた安愚楽牧場に投資し、ご存知のように会社が清算され200万円の損失を出しました。これまでの経緯で向いていないと自覚しているため、FXには手を出していません。
今後どのようにして資産形成を考えて行くべきでしょうか? また資産形成を進める上で、お勧めの良書がありましたら教えてください。
(30代後半 既婚・子供2人 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。資産形成を続けていく上で重要なのは、保有している資産全体のバランスを考えることです。
資産全体のバランスは取れているか?
ご相談者の場合、資産のバランスを見ると、国内不動産にかなりの部分が配分されています。
また、その結果として円貨資産の比率が高く、外貨資産の比率が低くなっていると考えられます。また、外貨資産はすべて米ドルになっています。
日本の不動産で安定したインカム収入を得るということは悪い戦略ではありません。
しかし、国内不動産の場合、国全体で見ると人口減少の影響によって今後、賃貸需要が減っていくことが予想されます。日本全体では賃貸物件の空室率が平均20%近くになっているというデータもあります。
保有している物件が現在どのような賃貸状況になっているのか、将来的な空室リスクはどの程度か、さらに売却する場合の価格についてなどを、専門業者に査定してもらうとよいでしょう。
また、ローンを組んで投資している場合は、賃料収入と金利の支払い比率も確認しておきましょう。
想定すべき“リスク”の種類
その上で、国内不動産を含めた保有資産全体がどんな配分状況になっているのかを俯瞰してみることが重要です。それによって資産全体のリスクコントロールができるようになります。
資産運用において考慮すべき大きな要素としては、株価リスクや為替リスクが考えられます。質問者の方の場合、現在、株式は保有されていないので為替リスクを考えればよいでしょう。
資産全体において外貨の比率が低いことは、必ずしも「為替リスクが低い」とは言えません。
円安により資産の実質的価値が下落するリスクがあるとも考えられます。「外貨を保有しないことによる円安リスク」を考えるべきなのです。
個人差はありますが、少なくとも資産全体の30%、人によっては50%以上を外貨で保有してもよいと思います。
また、米ドルだけではなく、ユーロやオーストラリアドルなどほかの通貨にも分散させておきましょう。
おすすめの本は?
手前味噌になりますが、書籍については『貯金が1,000万円になったら資産運用を考えなさい』をぜひお役立てください。
株式、投資信託といった金融資産だけではなく、不動産のような実物資産を含めて、資産全体をどのようにバランスよく配分すればよいかを私自身の経験も踏まえてまとめました。
また、長期投資の基本を知るための古典的名著として『ウォール街のランダムウォーカー』『敗者のゲーム』の2冊もおすすめいたします。