はじめに
躍進組のキーワードは「再開発」と「タワマン」
まずは上昇度です。トップは江東区豊洲。1回目の調査では70位だったのに、今回は27位。実に43も順位を上げています。
豊洲はかつては大規模な工場が建ち並ぶ殺伐としたエリアでしたが、近年は工場跡地の再開発が進み、大規模なタワーマンションが続々と誕生しています。晴海通りを5~6キロメートルも走れば、丸の内のオフィス街。平均時速30キロメートルで所要時間は10~15分ですから、交通の利便性も高水準です。
上昇度の第2位は、大阪市西区南堀江。1回目の調査では116位でしたが、今回は78位まで順位を上げました。木津川を挟んで京セラドームの東側に広がるエリアで、ここ数年の再開発で商業施設の集積が進み、高層マンションも建設されています。
3位は荒川区西日暮里。1回目の調査では97位でしたが、今回は64位。日暮里駅前の再開発で日暮里駅直結のタワーマンションが完成し、人気が上昇しているエリアです。
池袋駅周辺も大躍進です。上昇度ベスト10に西池袋、東池袋、池袋がランクインしています。やはり再開発ラッシュで高層マンションが相次いで建設されていることが原因でしょう。
伝統の高級住宅街に衰退の危機
一方、順位の後退が著しいのは、都心からやや離れている高級住宅街です。特に目を引くのは田園調布と成城です。
田園調布は1回目では6位だったのに、今回は何と25位です。成城は1回目は7位、今回は15位です。どちらも都心から15~16キロメートルくらいの場所ですから、自動車だと平均時速30キロメートルで30~40分です。
先般、田園調布で空き家が増えているという報道もありましたが、相続が発生すると、相続税の支払いのために物件を売らざるをえない、維持費が莫大で子の世代が持ち続けることができない、といった事情があるようです。
下降度が高いエリアは、いずれも一戸建て中心の住宅街です。子供が手を離れれば、広い家は不要になります。そもそも一戸建てはメンテナンスが大変です。その点、マンションはメンテナンスもセキュリティもマンション全体でやりますから、非常に楽です。
高齢者が郊外の一戸建てを引き払って都心の新築マンションに買い換えるという傾向は、大衆向けの住宅ではかなり以前から見られましたが、高級住宅街も例外ではなくなっているのでしょう。
移りゆく“社長が自宅に求める要素”
今回の調査で社長の住む街4位の代々木にも、同様の傾向が見え始めています。代々木は代々木公園に隣接する4丁目と5丁目が古くからの高級住宅街。公園の緑を借景にできる好立地ですが、基本的に一戸建てです。1回目、2回目は2位だったのに、今回は2つ順位を落としています。
なお、社長の居住地は会社の商業登記簿謄本に記載された代表者住所で特定しているようですので、居住場所を所有しているとは限りません。本宅は郊外にあって、ウィークデーに寝泊まりしている場所を商業登記簿謄本に載せているということもありえます。
かつてはブランド力や居住性が重視されてきた「社長の住む街」ですが、近年は全国的に進む高齢化や東日本大震災後の危機管理意識の高まりなどにつれて、交通やメンテナンスの利便性が重視されるようになっているようです。