はじめに
株価が上がった、株価が下がった。日々のニュースで目にする言葉ですが、「その株価は何を見ているのか」と改めて考える機会は意外と少ないでしょう。今回は日本の株式市場の動きを表す「株価指数」を考えます。
日経平均は「芸能誌」、TOPIXは「経済誌」?
日々のニュースで私たちが目にしている「株価」は、個別企業の株価ではなく、「株価指数」と呼ばれるものです。株価指数はよく経済を測る「ものさし」と呼ばれ、日本の株式市場の代表的なものとしては、日経平均株価やTOPIXがあります。
インデックス投資をされている方の場合、これらの指数に連動する投資信託を購入している方も少なくないでしょう。日本を代表する経済指標に投資をすると、テレビなどで手軽にその変動情報が入るので、自身が保有する投資信託の動きを簡単に知ることができるというメリットがあります。
しかし「日経平均株価」や「TOPIX」は同じ日本経済を見ているようで、実は経済の切り取り方が大きく異なります。イメージしやすいように、株価指数を「雑誌」にたとえて説明します。
日経平均株価は、有名スターを特集する芸能雑誌のようなものです。話題性のある企業、株価の高い企業が大きく取り上げられ、その動きが誌面全体の印象を左右します。株価の高い銘柄ほど影響力が大きくなる仕組みのため、一部の“目立つ企業”が全体を引っ張る構造です。
一方でTOPIXは、企業規模に着目した経済誌のような存在です。時価総額、つまり会社の大きさに応じて影響力が決まるため、日本を代表する大企業の動きが色濃く反映されます。日本経済の「基盤」を映す指数と言えるでしょう。ただし、大企業の動きが中心になるため、中小企業の状況までは必ずしも見えないという側面もあります。
つまり「日経平均株価」や「TOPIX」は、日本の経済全体の動向を示しているのではなく、それぞれの方針で日本の経済を切り取った上で、その動向を示しているのです。従って、日経平均株価が上がったのに、TOPIXが下がった、あるいはその逆のことが起こることがしばしばあるのです。
一部の企業に依存しない「均等配分」という考え方
こうした中で、新たな視点を与えてくれる指数として注目されているのが、読売新聞社が算出する「読売株価指数(読売333)」です。名前から容易に分かるように、上場企業333銘柄で構成されています。
先ほどの雑誌の例えでいえば、読売333は、人気の観光地をバランスよく紹介するガイドブックのような存在といえるでしょう。333社をほぼ均等に組み入れることで、企業規模や株価に関係なく、それぞれに同じ一ページを割く設計になっています。大企業も中堅企業もフラットに扱われるため、日本企業全体の広がりを比較的バランスよく捉えることができます。
ここで重要なのは、どの指数も「間違っている」のではなく、「見ているものが違う」という点です。株価指数は、いわば“編集された世界”です。どの企業をどのように組み入れるかによって、見える景色は大きく変わります。
同時にこの視点は「分散とは何か」を考えるヒントにもなります。分散投資というと銘柄数を増やすことと思われがちですが、本質は“偏りを減らすこと”です。日経平均は値がさ株に、TOPIXは大企業に、それぞれ偏りを持っています。一方で読売333は均等配分により、その偏りを小さくする設計です。
この“均等に持つ”という考え方には、もう一つ重要な意味があります。どの企業が将来大きく成長するかを事前に見極めることは難しいため、あえてすべてを同じ重みで持つことで、特定の企業に依存せず、幅広い成長の機会を取り込むことができます。例えるなら、クラス全員の平均点を見るようなもので、一部の優秀な生徒だけでなく、全体の実力を把握するイメージです。
さらに、均等配分は定期的に調整(リバランス)されることで、上がったものを少し減らし、下がったものを買い増すという動きになります。結果として、「高いところでは抑え、低いところでは拾う」という投資行動が自然に組み込まれている点も特徴です。