はじめに

2026年に入って、「対米投資第〇弾」というニュースを頻繁に耳にするようになりました。関連銘柄の株価が相次いで人気化するなど、株式市場の注目度は日を追うごとに上がっている状況です。そこで、今回は「5,500億ドルの対米投資」を掘り下げ、どのような企業が恩恵を受け、業績が拡大するのかについて検証します。


対米投資88兆円のベースになる「共同ファクトシート」

「5,500億ドル(2026年4月末のドル円レートで約88兆円、以下同じ)の対米投資」の根幹となっているのは、2025年7月22日に合意された日米間の支援の枠組みです。米最高裁で違法判決が下ったトランプ関税の税率引き下げの見返りとして合意に至りました。この時点では「5,500億ドル」というインパクトのある数字だけが取り沙汰され、「どの分野にいくら」といった詳細は明かされていませんでした。

具体的な内容が明らかになったのは、2025年10月下旬。トランプ大統領が訪日し、高市首相との日米首脳会談が行われたタイミングです。この時、日米両政府によって「日米間の投資に関する共同ファクトシート」が発表されました。このファクトシートの内容が、足元で注目されている対米投資プロジェクトのベースになっています。これを読み解けば、どんな分野にどの企業グループが関わり、どの程度の事業規模が想定されているかを把握できます。

下表は、ファクトシートに記載された日本企業と事業の規模と内容を抜粋したもの。このほか、エネルギー分野では原発大手のウエスチングハウスや建設企業のベクテル、電機メーカーのキャリア、AI向け電源開発ではSMR設計・販売のニュースケール・パワー、重要鉱物では銅精錬大手のファルコン・カッパーなど、米国の企業名と事業規模が記載されています。

画像:著者作成

日本企業が関連する事業で規模が大きいのは、エネルギー分野の原子炉・SMR(小型モジュール型原子炉)の建設、データセンター発電システム、大規模電力インフラの構築です。それぞれ最大2,000億ドル(約32兆円)、300億ドル(約4兆8,000億円)、250億ドル(約4兆円)となっています。

プロジェクト第二弾までの概要は公表済み

ファクトシートをベースに、現在は第二弾までが発表されています。2026年2月18日、その第一弾として


・工業用ダイヤモンド(人工ダイヤ)の製造(6億ドル:約960億円)
・米国産原油の輸出インフラの整備(21億ドル:約3,360億円)
・ガス火力発電(333億ドル:約5兆3,280億円)


という3つのプロジェクトが公表されました。3つ目のガス火力発電は、データセンターなどに電力を供給するのが主な目的。人工ダイヤ製造が米ジョージア州、原油輸出インフラ整備がテキサス州およびメキシコ湾岸、ガス火力発電は米オハイオ州と、すでに建設される場所も記されています。

対米投資“第一弾”の発表を受けて、日本の株式市場では人工ダイヤ関連としてダイヤモンド工具大手の旭ダイヤモンド工業(6140)、同じくダイヤモンド工具を手掛けるノリタケ(5331)の株価が急騰。事業規模や時価総額が小さい旭ダイヤモンドの株価は1月下旬から上昇を始め、株価は800円台半ばから1735円まで、1カ月余りで2倍超に暴騰しました。

第一弾が発表された2月半ばよりも早く株価上昇が始まっていたのは、すでに1月下旬の段階で「対米投資に関して人工ダイヤ製造が有力候補」との観測が浮上していたため。ほかに、ガス火力発電関連として放電加工国内大手の放電精密加工研究所(6469)などの関連株も人気化しました。

さらに3月19日、第二弾として前述のSMR(事業規模400億ドル:約6兆4,000億円)とガス火力発電所の建設(2カ所合計で同330億ドル:約5兆3,000億円)が発表され、こちらも注目を集めています。続く第三弾の発表が待たれるところです。

個人投資家はプロジェクト参画による業績拡大を注視

今回の対米投資プロジェクトに関して、一部メディアや識者などから「不平等な内容ではないか」と批判する声が上がりました。というのも、この対米投資プロジェクトで生み出される利益は90%が米国側、残りの10%を日本側が受け取る枠組みになっているからです(厳密には、プロジェクトによって生まれた収益は、まず“みなし配当”の形で分配され、その分配率は、みなし配当額に相当する部分は両国で折半し、それを超える部分については90%が米国、残りの10%が日本の取り分)

確かに、日米合同プロジェクトを2つの会社による協業と考えた場合、みなし配当分を超える利益の大半が米国側に落ちるという契約は平等とは言い難いものです。ただ、プロジェクトを進める上で必要な資材や部品、システムなどはすべて受注した日本企業の売上高、利益になります。現時点では、このプロジェクトが継続して利益を生み出せるかどうかは未知数ということもあり、ひとまず、プロジェクトを請け負った日本企業の業績が拡大し、株価が上昇するのであれば、日本の投資家は「それによって値上がり益を得る」という視点に立つことが重要でしょう。

ちなみに、このプロジェクトの「出資金の比率」は米国が9割、日本が1割になるとされています。当然、プロジェクトへの出資はリスクを伴うものですから、出資比率を考えれば、利益配分も9対1となるのは自然な流れでしょう。もちろん、将来的には両国間の折衝によって出資や利益の配分比率が変わる公算もあります。

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