はじめに
FRB——1992年以来の4票分裂が示す内部対立
米国では、FOMCが政策金利を3.50〜3.75%に据え置きました。こちらも表面的には予想通りの据え置きでしたが、中身はかなり複雑です。報道によれば、今回のFOMCでは反対票が多く、1992年以来の分裂度合いとされています。ミラン総裁(シカゴ連銀) は0.25%の利下げを主張した一方、ハマック(クリーブランド)、カシュカリ(ミネアポリス)、ローガン(ダラス)の3地区連銀総裁は声明文から緩和方向のニュアンスを削除するよう求め、反対票を投じました。結果は賛成8、反対4の分裂となりました。つまり、FRB内部では「利下げすべき」という声と、「利下げ期待を残すべきではない」という声が同時に存在しているのです。
この分裂は、今の米国経済の難しさをそのまま映しています。雇用はまだ崩れていない。景気も極端に悪いわけではない。一方で、インフレは目標の2%を上回り、エネルギー価格の上昇が短期的なインフレ圧力になっています。FRBの声明でも、中東情勢が経済見通しの不確実性を高めており、雇用と物価の両面のリスクに注意していることが示されました。
パウエル最後の会見——データ依存と独立性への言及
パウエル議長の記者会見では、FRBは現時点で、景気減速とインフレ再加速のどちらにも振れ得るため、データを見極める時間を確保したいという姿勢を示したといえます。パウエル議長の発言は、政策金利の据え置き(3.5〜3.75%)を維持しつつ、先行き不透明感の強さを強調する内容でした。金融政策は引き続きデータ次第で判断する姿勢です。景気は個人消費や設備投資に支えられ堅調とされる一方、住宅市場の弱さや雇用の伸び鈍化など、分野ごとのばらつきが見られます。失業率は4.3%と安定していますが、労働需給はやや緩和方向です。
インフレは総合PCE3.5%、コア3.2%と依然高く、特に中東情勢を背景としたエネルギー価格上昇が押し上げ要因とされています。ただし長期のインフレ期待は安定しています。政策運営は「毎回の会合で判断する」として柔軟姿勢を維持し、雇用と物価のバランスを慎重に見極める構えです。また、中央銀行の独立性の重要性にも言及しました。
なお、パウエル議長は今回が議長としての最後の記者会見であると明言した一方、連邦準備理事会の理事としては引き続き職にとどまる意向を示しました。
ECB——インフレと景気の板挟みで継続する慎重姿勢
欧州中央銀行についても、ECBは4月30日の理事会で中銀預金金利を2.0%に据え置き。すでに2025年6月の利下げを最後に、政策金利は据え置きが続いています。欧州もまた、中東情勢によるエネルギー価格上昇と景気減速懸念の間で身動きが取りにくくなっています。市場では、今回のECBも政策変更を急がず、インフレ上振れと成長下振れの双方に目配りする姿勢を示すと見られています。