はじめに

機関投資家が手を出しやすい時価総額

株価パフォーマンスの差を語る上で欠かせないのが、機関投資家の存在です。時価総額1兆円を超えるフードアンドライフカンパニーズは、大型ファンドでも組み入れやすい銘柄として機関投資家の買いを集めています。機関投資家にとって、時価総額の大きさは重要な投資判断基準です。一定規模以上のポジションを取ろうとすると、時価総額が小さい銘柄では株価に大きな影響を与えてしまうリスクがあります。その点、フードアンドライフカンパニーズは安心して大口投資ができる規模を備えているのです。

しかし、個人投資家の視点で見ると、フードアンドライフカンパニーズの投資妙味は決して高くありません。PERは39倍と割高水準にあり、配当利回りはわずか0.39%。増配が発表されたものの(期末配当35円→40円)、配当狙いの投資家にとって魅力的とは言えない水準です。株式分割(1株→2株)の実施も発表され、現在10,000円台の水準から6月30日以降は半値になりますが、それでもまだ気軽に買える株価ではありません。

一方で、機関投資家は単純なバリュエーション指標だけでなく、成長ストーリーの持続性や市場シェア拡大の可能性を重視しています。海外展開による成長余地の大きさ、デジタル化による差別化、多ブランド戦略によるリスク分散――これらの要素を総合的に評価すると、現在の株価水準も「適正」と判断されているのでしょう。

デジタル化で差をつける「デジロー」戦略

もう一つの差別化要因が、デジタル技術の活用です。フードアンドライフカンパニーズが導入する「デジロー」について、決算説明資料では「台湾では、上期56店舗に到達。初のデジロー店舗が好調で既存店へも導入し、着実に集客力が上昇した」と成果が示されています。

国内でも既存店客数、既存店客単価ともに上期計は前年度プラスに推移。4月までの月次データを見ると、今期既存店売上高で前年割れした月は一度もなく安定した成長を維持。「改装は、計画通りに進捗。デジローがお客様の体験価値向上に寄与」していることが数字で証明されています。

商品キャンペーンやIPコラボレーションも巧みで、『ジョジョの奇妙な冒険』「パペットスンスン」など人気キャラクターとのコラボにより来店動機が生まれ、リピート率が向上しています。

一方、くら寿司も「ビッくらポン!」や「プレゼントシステム」などエンターテインメント性では独自色を打ち出していますが、デジタル化のスピードでは差をつけられている印象です。

営業利益率の圧倒的な差が示す競争力

飲食業界全体が直面する材料費高騰や人件費上昇という課題に対する両社の対応力を比較すると、興味深い違いが浮き彫りになります。

くら寿司の直近1Q決算を見ると、売上原価率は41.4%とフードアンドライフカンパニーズの43.0%を下回っており、原価管理では優位に立っています。しかし、営業利益率では、フードアンドライフカンパニーズ11%、くら寿司2.4%と大きな差が開いています。

この4.6倍もの営業利益率の差は、単なる原価管理の違いではなく、事業構造そのものの差を示しています。フードアンドライフカンパニーズは、スシローだけではなく、多ブランド戦略により、リスクを分散しながら高い収益性を実現しているのです。

このように消費者サイドから見ると同じ回転寿司チェーンに見えても、投資家目線で見ると明らかな違いが見えてきます。小売業全体では決して追い風ではない環境で、上場来高値を更新するフードアンドライフカンパニーズの強さは、目を見張るものがあります。ここはPERなどの割高さには目を瞑って、エイッと波に乗るべきか、投資家の判断が分かれるところです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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