はじめに
オプション出来高の増加は危険信号だけではない
ここで注意したいのは、オプション取引の増加をすべて危険信号と見るべきではないという点です。オプションは投機だけではなく、ヘッジ、裁定、ボラティリティ取引にも使われます。特に機関投資家は、現物株を保有しながらオプションでリスク管理を行うことも少なくありません。
上昇が上昇を呼ぶ局面は反転も速くなる
ただし、相場が一方向に強く上昇している局面で、コールオプションの買いが膨らみ、同時に半導体への資金集中が進んでいる場合、上昇が上昇を呼ぶ構造になりやすいのは確かです。株価が上がる、コールのデルタが上がる、マーケットメーカーがヘッジ買いを増やす、さらに株価が上がる、という流れです。これが続いている間は非常に強い相場に見えますが、反対方向に動き始めると、ヘッジの巻き戻しや利益確定が重なり、下落スピードが速くなる可能性があります。
日本の投資家は為替リスクもあわせて見る
日本在住の投資家にとって大切なのは、この状況を「米国株はもう危ないから全部売る」と単純化しないことです。むしろ、AIや半導体の長期テーマは依然として強いと考えられます。NVIDIA、Broadcom、AMD、Marvell、Micron、TSMC、ASML、東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、レーザーテック、光通信関連、電力インフラ関連など、AI投資の恩恵を受ける企業群は広がっています。
ただし、短期的にはかなり良い材料を織り込んでいる可能性があります。半導体株やAI関連ETF、NASDAQ100、FANG+、SOX連動型商品などに資金が偏っている場合は、一定の調整も前提に、ポートフォリオを確認しておくべき局面です。
現実的な対応としては、まずレバレッジをかけた追いかけ買いは避けたいところです。相場が強いときほど、短期的な値動きに乗りたくなりますが、オプション需給によって押し上げられた相場は、反転時のスピードも速くなりやすいからです。
次に、半導体やAI関連に大きく偏っている場合は、一部利益確定やリバランスを検討する余地があります。成長テーマに投資することと、同じテーマに過度に集中することは別です。特に日本の投資家は、米国株の値動きだけでなく、ドル円の変動も合わせて考える必要があります。株価が横ばいでも円高になれば、円ベースの評価益は削られます。
積立投資は短期調整を前提に考える
一方で、長期投資家が積立を止める必要がある局面とも言い切れません。S&P500や全世界株式、NASDAQ100に時間分散で投資している場合は、短期調整も前提に入れながら、無理のない金額で継続する選択肢は十分あります。重要なのは、「一括で高値を追う」のではなく、「時間を分散しながら成長テーマに参加する」ことです。
いま警戒すべきは暴落よりも集中リスク
今回のデータを総合すると、現在の米国株市場は、S&P500全体のテールリスクが極端に過熱しているというより、AI・半導体関連への資金集中がかなり強まっている相場と見るのが自然です。執筆時点のVIX17台、SKEW138台という組み合わせは、市場全体が恐怖に包まれている状態ではありません。むしろ、表面上は落ち着いている一方で、相場の内部では半導体への集中が進んでいる、という構図です。
したがって、投資家が見るべきポイントは、VIXだけではありません。半導体指数、SOX、SMH、NASDAQ100、FANG+、S&P500均等加重指数、半導体銘柄の50日移動平均上回り比率、そしてオプション市場のコール出来高や0DTEの比率をあわせて確認する必要があります。
いまの相場は、AIによる本物の成長期待と、デリバティブ市場の短期需給、そして半導体への資金集中が同時に進んでいる相場です。強気で見る理由はあります。しかし、過信してよい相場ではありません。
投資家に必要なのは、成長の波には参加しながらも、熱狂には巻き込まれすぎない姿勢です。特に半導体関連については、長期テーマとしての魅力は大きい一方で、短期的には10〜20%程度の調整が起きてもおかしくない前提で、ポジションサイズを管理することが重要です。
現時点では、「暴落開始」と見る段階ではありません。ただし、「集中リスクの高まり」は明確です。S&P500全体ではなく、まず注意すべきは半導体・AI関連の過熱です。ブレッドスが崩れていない限り上昇トレンドは続きやすいものの、もし半導体内部の広がりが失われ、SOXやSMHが下げ始め、同時にVIXやVXN(Cboe NASDAQ-100 Volatility Index)が上昇するようなら、そのときは巻き戻しが本格化するサインとして警戒を強めるべきだと思います。
今は落ち着いているので、今のうちに知っておいていただけると有用ではないかと思います。
この記事が皆様の投資の少しでも参考になれば幸いです。
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