はじめに
親子で検討できる主な選択肢と、その特徴
ここからは、親子間である程度の課題意識が共有できた段階で、負動産をどうしていくか、具体的に考えられる主な選択肢をみていきたいと思います。
①そのまま保有し続ける
親がその家に住み続ける場合や、子どもが将来住み替えを検討している場合など、「当面は現状維持」という判断もあり得ます。
メリットとしては、すぐに大きな決断をしなくて済むことが挙げられます。親にとっては精神的な安心感も大きいでしょう。一方で、建物の老朽化や人口減少などが影響して、「いざ売ろうと思ったときには、今よりも条件が悪くなっている」リスクがあります。
②売却や賃貸で、「現金」に変える
親が元気なうちに売却や賃貸に踏み切り、「不動産」を現金に変えておく選択肢です。特に、地価が高騰している一部の都市部を除き、少子高齢化の影響等で、すでに地価が暴落し、1円でも売れない不動産も珍しくない現状があります。
そのため、その不動産の需要が見込める状況にあれば、前向きな選択肢として少しでも早いうちに売却や賃貸を進め、現金資産として蓄えられる状態に変えることが推奨されます。
③ 「手放す」ことを前提に、手放せる制度やサービスを組み合わせる
手放す方針はまとまったものの、不動産会社に相談したところ「そんな場所では、買い手がいないから1円でも売れません」などと言われ、手放したくても手放せない状況に陥ってしまうケースもあります。
その場合、「売却」というよりは「処分」という観点で、「いかに負担を抑えながら手放すか」を考えていくことになります。ここで選択肢になりうるのが以下の方法です。
・相続放棄
・相続土地国庫帰属制度(不要な土地を国に有料で引き取ってもらう制度)
・民間の有料引取サービス(不要な不動産を有料で引き取ってもらうサービス)
それぞれ、利用条件や費用負担、メリット・デメリットが大きく異なります。
「相続放棄」は、特定の不動産だけでなく、プラスの財産も含めて相続全体を放棄することになりますし、公的な土地引取り制度は、対象となる土地に厳格な条件が設けられています。また、民間の有料引取サービスは、費用負担とサービス内容のバランス、事業者の信頼性の見極めが重要になります。
これらの選択肢は、親子だけで判断するには難しい部分も多いため、「こういう制度やサービスもあるらしい」「一度専門家に聞いてみよう」と、次のステップにつなぐための話題として位置づけるのがおすすめです。
「今話す」こと自体が最大のリスク対策
負動産と化した不動産は、そのものが問題なのではなく、「負動産について話し合わないこと」が、将来のトラブルの最大の原因になります。親が亡くなった直後、感情が整理されていない中で、相続人どうしが短期間で結論を迫られる――そんな場面で冷静な判断をするのは、誰にとっても簡単ではありません。
子ども側としてできる最大のリスク対策は、「親が元気なうちに、負動産について話を始めること」です。もちろん、完璧な答えを一度で出す必要はありません。むしろ、最初の話し合いでやるべきことは、「これから何を考えていくのか」「どこに向けて議論を進めていくのか」を共有することです。親子それぞれの思いを尊重しながら、自分たちの現実も大切にしたいというスタンスさえぶれなければ、時間をかけて話し合うことで、きっと家族としての落としどころが見えてくることでしょう。