はじめに

半年前、わたしはこの連載で上場来高値を更新中のイオン(8267)について書きました。当時のPERは約200倍。それでも「単元未満株で少しずつ、分散して買っていく手はある」とお伝えしました。

ところがあれから半年、イオンの株価は2,900円台の高値から1,300円台へと、ほぼ半値に沈んでいます。イオンは株主優待目当ての個人投資家がとても多い銘柄なので、この状況をどう解釈すればいいのか、もやもやしている方も多いのではないでしょうか?

参考記事:「イオン」が上場来高値を更新! PER197倍でも買われるのは「株式分割」と「優待」が理由?


過去最高益なのに株価は半値!?

まず押さえておきたいのは、イオンの商売そのものはむしろ好調だということ。4月9日に発表された2026年2月期決算は、営業収益10兆7,153億円で5期連続の過去最高。本業のもうけを示す営業利益は2,704億円(前期比+13.8%)と、2期ぶりに過去最高を更新しました。この5年で営業利益は年平均11.6%のペースで伸びており、収益の平均の伸び(同5.3%)を大きく上回っています。2027年2月期も営業利益は3,400億円(+25.7%)とさらなる大幅増益を見込んでおり、数字を見るかぎりむしろ力強いのです。では、なぜ株価は半値になったのか。株価と業績がチグハグなだけに、余計にモヤモヤが膨らみます。

“稼ぎ頭”はどこか――決算の中身を分解する

セグメント別に見ると、今回の最高益を牽引したのは、じつは小売の外側でした。商業施設のイオンモールを抱えるディベロッパー事業が営業利益709億円(前期比+33.7%)と過去最高。猛暑のなか涼みに行ける場所としてモールに人が集まり、インバウンドの免税売上は約1.5倍に伸びました。ドラッグストアのヘルス&ウエルネス事業も523億円(+45.4%)、映画館やゲームセンターを含むサービス・専門店事業も270億円(+15.7%)と、軒並み伸びています。

一方で、イオンの本業であるスーパー(SM事業)は298億円(-8.2%)、ディスカウントストア(DS事業)は72億円(-9.5%)と減益でした。総合スーパーのGMS事業はPB拡販と店舗のDX効率化で214億円(+31.0%)と二桁増益でしたが、その中核であるイオンリテール単体は、原材料高と賃上げに押されて営業利益71億円の減益。つまり「食品スーパーで稼ぐ」という一番わかりやすい本業は、まだ強い向かい風のなかにいるのです。

ただし同じスーパーでも、都市部に小型店を集中出店する「まいばすけっと」は別格。今期だけで129店舗を増やし、店舗数は1,323店舗に。共働きや単身世帯のすぐ近くで少しだけ買いたい需要をつかみ、増収増益と気を吐いています。

このように身近では好調に見える売り場もあるだけに、ますます株価と実態に違和感を感じやすくなっているのでしょう。

成長エンジンは「トップバリュ」と「ツルハ」

とはいえ、イオンの中長期の物語が崩れたわけではありません。値上げ疲れした消費者のお財布をしっかりつかんでいるのが、プライベートブランの「トップバリュ」です。価格訴求型の「ベストプライス」を軸に、トップバリュの売上はグループ計で前期比110%。トップバリュ単体の売上規模は約1兆2,000億円と、現・吉田社長が就任した2020年から六年で約1.5倍に育ちました。安いだけでなく、自社で企画・製造・物流まで握ることで利益率も底上げできる、インフレ時代の戦略は着実に奏功しています。

もう一つの目玉が、2026年1月に子会社化したドラッグ大手ツルハHDです。先に統合したウエルシアと合わせ、調剤併設と食品強化でライフストアへと進化させる構想。2032年2月期には新会社で売上3兆円・営業利益2,100億円という、グループの新しい屋台骨を目指しています。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]