はじめに
高齢期加入における「2つの縛り」と注意点
60歳から70歳までiDeCoで運用ができるという事実は、形を変えたキャッチアップ拠出であるとも言えるでしょう。掛金も大幅に引き上げられるので、老後資金作りのラストスパートとして利用する方も多くなることが予想されます。
しかし、忘れてはいけないのが確定拠出年金には「資金引き出しの制限がある」ということです。60歳で老齢給付金を受け取ろうと思うと、確定拠出年金は「10年しばり」があるので、10年以上の加入期間がないと資金の引き出しができません。また60歳以降で新規でiDeCoに加入すると今度は「5年しばり」のため、加入期間が5年経過しないと資金の引き出しができません。
確定拠出年金は、掛金を拠出しながら、資金を引き出すことができない仕組みです。従って70歳まで掛金を拠出する計画を立てると必然的にその資金は70歳まで引き出しができなくなります。
さらに、70歳まで加入が認められる条件には、「老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないこと」という文言があります。
老齢基礎年金の満額(40年間保険料を支払った方が受け取れる年金額)は約84万円ですが、iDeCoを継続加入したい方は受給することができません。70歳までiDeCoを優先するのであれば、老齢基礎年金は繰下げて70歳から受給する必要があります。
単純に考えると、5年間の老齢基礎年金受給額420万円は使えないお金として生活設計をしないとiDeCoに加入できないということです。公的年金は、遡り一括請求が可能なのですが、iDeCoに70歳まで加入した上で、時効となっていない過去5年分の老齢基礎年金を一括で受け取るとペナルティとしてその間のiDeCoの掛金は返金することになるそうです。もちろん確定申告も過去に遡ってやり直しになりますから税金や社会保険料の支払も発生するかも知れません。
仮に70歳で老齢基礎年金の受給を開始すれば年金額は1.42倍の約119万円に、75歳まで繰下げると年金額は1.84倍の約155万円になります。iDeCoで築いた資金と合わせ、どうお金を使うのかあらかじめ考えておいた方がよいでしょう。
ライフプランに合わせた賢い選択を
iDeCoの老齢給付金を60歳で受け取って、その後iDeCoを継続するということもできません。定年後のライフプランはひとそれぞれです。海外旅行を楽しみたい、理想の地に移住する、新しいことに挑戦するなどの計画があってもiDeCoの資金は引き出しができません。あるいは万が一60代で大きな病気になってもiDeCoの資金引き出し制限が資金繰りの負担になってしまうことも考えられます。
企業型DCには特別ルールがあり、60歳で加入資格を失い老齢給付金を請求したとしても、あらためてiDeCoに新規加入することが可能です。住宅ローンの返済を急ぎたい、定年時に資金用途があるといった場合、一度老齢給付金を受け取ってその後iDeCoで資産形成といった計画を立てることは可能です。ただし、その際は加入期間がリセットされるため、70歳でiDeCoの積立を終了し資金を引き出す際の退職所得控除の計算は60歳からの加入期間となります。また60歳の新規iDeCo加入なので、前述した5年しばりの対象でもあります。
確定拠出年金の制度拡大によって選択肢が広がることはとても良いことです。確定拠出年金を通して市場にお金が流れることを喜ぶ人も少なくないでしょう。しかし利用する側にとって最も重要なことはご自身のライフプランです。ご自身の「ありたい姿」を実現するために利用するのが確定拠出年金です。
ぜひ、制度利用の前に、ご自身のライフプランをしっかり考えていただき、上手に制度を活用して下さい。
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