はじめに
国の制度であるiDeCoやNISAは、若年層を中心に加入者が増え続けています。貯蓄だけではなく、運用しながら将来に備えるという考え方は、以前よりずっと身近なものになりました。近年は制度改正も続き、資産形成への関心はますます高まっています。
自分の将来のために積み立てていた資産も、思いがけず道半ばで亡くなってしまうことも考えられます。そんな時、積立てていたお金は誰が受取るのか、資金はすぐ使えるのか、という点まで考えている人は、意外と少ないように感じます。
iDeCoやNISAは「本人の資産形成制度」
まず知っておきたいのは、iDeCo(イデコ)やNISAは、基本的には「本人の資産形成制度」だということです。
①iDeCoの場合
iDeCoは老後資金を準備するための制度です。
万一、加入者が亡くなった場合には「死亡一時金」として、遺族が受け取ることができます。iDeCoでは、生命保険と同様、事前に死亡一時金受取人を指定することができます。
指定していなくても遺族が受け取ることができますが、iDeCoの資産は法令で定められている相続順位とは少し異なります。配偶者が優先順位1位に該当することは変わりませんが、第2順位以降は「加入者等の収入で生計を維持していたか」が重要視されるため注意が必要です。
そして、生命保険と決定的に違うのは、自動的に振り込まれるわけではなく、受取るためには手続きが必要になる点です。
運用管理機関に、遺族または指定された受取人が「加入者等死亡届」などの必要書類を提出します。加入者等が死亡したことを証明する書類として、「死亡診断書」のコピーなどの提出も必要です。請求後支払われるまで、1~2ヵ月かかる場合もあります。
「iDeCoにお金があるから大丈夫」と思っていても、実際には次のようなケースがあります。
・死亡した人がiDeCoに加入していたか家族が知らない
・どこの運用管理機関で加入していたのかわからない
・手続き方法がわからない
特に最近は、ネット証券で手軽に始められる時代です。本人しか内容を把握していないケースも珍しくありません。
②NISAの場合
NISAについては、さらに資産としての性格が強くなります。
NISAはあくまで投資の非課税制度です。そのため、亡くなった場合には証券口座の相続手続きが必要になります。相続財産として扱われますので、死亡の連絡を受けた口座は凍結され、それ以降の売買はできなくなります。
相続では、誰がどの財産を取得するのかを確定する必要があります。遺言書があればその内容に従いますが、遺言書がない場合には、相続人の間でどのように分けるか、遺産分割協議書を作成し、相続する人を決定しなければなりません。
確定したら、遺産分割の内容を金融機関へ届け出たうえで、必要書類を提出して手続きを進めていきます。そのため、
・相続人同士の確認
・遺産分割協議
・名義変更
などが必要になり、現金化には大変時間がかかることになります。
特に相続人が複数いる場合や、遺産分割協議がまとまらない場合には、さらに時間を要することもあります。もちろん、iDeCoやNISAが悪い制度というわけではありません。むしろ、将来に向けた資産形成として非常に優れた制度です。
ただ、「老後資金を育てる制度」と、「万一の時にすぐ使えるお金」は、役割が違うということを知っておく必要があります。