はじめに
「オルカン1本でいいって聞いたので、それで始めました」。NISAをきっかけに投資を始めた人と話すと、こうした声を聞くことがあります。
オルカンは、低コストで世界中の株式に分散投資できる代表的な投資信託です。長期投資の選択肢として、有力な一本であることは間違いありません。
一方で、2025年の成績を見ると、eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)は、オルカンを4.6%上回りました。「それなら、成績が良かった3地域均等型に乗り換えた方がいいのでは」
と感じる人もいるかもしれません。
ただし、1年の成績差だけで乗り換えを判断するのは慎重に考えたいところです。この記事では、オルカンと3地域均等型の違い、そして乗り換えを考える前に確認したいポイントをFPの視点から解説します。
2025年、なぜ3地域均等型がオルカンを上回ったのか
まず、2025年の結果を確認しておきましょう。SBI証券のレポートによると、2024年12月30日から2025年12月30日までの比較で、eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)がオルカンを4.6%上回りました。この差が生まれた理由は、「両者の配分の違い」にあります。
オルカンは、世界の株式市場全体に投資する商品ですが、国や地域ごとの配分は時価総額に応じて決まります。つまり、世界の株式市場で存在感の大きい国や企業ほど、ファンド内の比率も高くなります。現在の世界株式市場では米国企業の存在感が大きいため、オルカンでも米国の比率は6割強を占めます。
一方、3地域均等型は、日本株式、先進国株式、新興国株式におおむね3分の1ずつ投資する商品です。2025年は、新興国株式や国内株式が相対的に好調でした。そのため、米国以外の地域を多めに持つ3地域均等型に有利な市場環境だったといえます。
ただし、これは「3地域均等型の方が優れている」という意味ではありません。2025年は、3地域均等型の配分がたまたま市場環境に合っていた、と受け止めるのが自然です。
オルカンと3地域均等型は「型」が違う
オルカンと3地域均等型の違いは、単に投資先が違うという話ではありません。大きく違うのは、配分の考え方です。
オルカンは、時価総額型です。世界の株式市場における時価総額の大きさに応じて、国や企業の比率が決まります。米国企業の存在感が大きければ米国比率が高くなり、別の国や地域の存在感が大きくなれば、その比率が自然に高まります。つまり、オルカンを持つということは、「世界中に分散しながら、市場全体の重みに従う型」を選ぶということです。
一方、3地域均等型は、日本、先進国、新興国におおむね3分の1ずつ配分します。世界の時価総額にそのまま任せるのではなく、地域ごとの配分をあらかじめ均等に近づける考え方です。これは、どちらが正しいという話ではありません。
オルカンは、市場全体の重みに従う型。3地域均等型は、地域の偏りを抑える型。この違いを理解しているかどうかが、乗り換えを考える前の出発点になります。
「均等型が有利な年」と「時価総額型が有利な年」は入れ替わる
2025年は、3地域均等型がオルカンを上回りました。しかし、それは今後も3地域均等型が上回り続けるという意味ではありません。米国株が強い年は、米国比率の高い時価総額型が有利になりやすくなります。特に、米国の大型ハイテク株が相場をけん引する局面では、オルカンのような時価総額型はその恩恵を受けやすいでしょう。
一方、米国以外の地域が強い年は、日本株式や新興国株式を多めに持つ均等型が有利になりやすくなります。どちらが有利になるかは、その年の市場環境によって入れ替わるものです。
ここで避けたいのは、「今年勝った方」に毎回乗り換えることです。昨年はオルカンがよかったからオルカン。今年は3地域均等型がよかったから3地域均等型。来年は別の商品がよかったから、また乗り換える。この判断を繰り返すと、長期投資の方針が毎年のランキングに左右されることになります。
成績を確認することと、成績で乗り換えることは別の話です。前者は健全な振り返り、後者はランキング追従です。