はじめに

中間選挙前の利下げシナリオとFRBの独立性

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ここからは中間選挙前の利下げシナリオの可能性についても考えたいと思います。CME FedWatchによると、6月25日時点で、2026年内に2回以上の利上げが行われる確率は40%を上回っています。ただ、ケビン・ウォーシュFRB議長を考えるうえで重要なのは、今回のFOMCで政策金利が据え置かれたことそのものよりも、ウォーシュ氏が置かれている政治的な立場と、FRB議長として守らなければならない独立性のバランスです。

トランプ大統領はこれまで、FRBに対して利下げを求める姿勢を繰り返し示してきました。ところが、ウォーシュ氏については、金利政策に関して「彼のやりたいようにやらせる」という趣旨の発言をしています。これは一見すると、トランプ氏がウォーシュ氏の判断に一定の裁量を与えているようにも見えます。

政治的に見られやすい利下げ判断

ただし、ここで注意したいのは、ウォーシュ氏が完全に政治から距離のある人物として見られているわけではないという点です。

ウォーシュ氏は、1990年代にモルガン・スタンレーで投資銀行業務に携わり、その後、ジョージ・W・ブッシュ政権で経済政策担当の大統領特別補佐官や国家経済会議の要職を務めました。さらに2006年から2011年まではFRB理事を務め、リーマン・ショックを含む金融危機対応にも関わった人物です。つまり、金融市場、政府、中央銀行のすべてを経験している点で、実務経験は非常に豊富です。

一方で、ウォーシュ氏にはトランプ氏に近いと受け止められやすい人的ネットワークがあります。ウォーシュ氏はエスティローダー家のジェーン・ローダー氏と結婚しており、義父はロナルド・ローダー氏です。ロナルド・ローダー氏はトランプ氏の有力支持者として報じられてきた人物でもあります。こうした家族関係や人的ネットワークもあり、市場からは「ウォーシュ氏はトランプ政権に近いFRB議長ではないか」と見られやすい面があります。

このため、ウォーシュ氏が中間選挙前に利下げを行う場合、市場はどうしても「トランプ政権に配慮したのではないか」と受け止めやすくなります。特に、トランプ政権にとっては、利下げによって住宅ローン金利や企業の資金調達コストが下がり、株式市場にも追い風が吹けば、選挙前の経済ムード改善につながります。その意味で、政治的には中間選挙前の利下げは魅力的なカードです。

しかし、ウォーシュ氏が実際に利下げを行うとしても、それは「トランプ政権に配慮して利下げする」という単純な形ではなく、あくまで経済データを根拠にした形で行われる可能性が高いと考えられます。たとえば、雇用の減速が明確になり、賃金上昇圧力が弱まり、インフレ率がピークアウトしていると説明できる状況になれば、ウォーシュ氏は「景気の下支え」ではなく、「物価安定と雇用のバランスを取るため」という理屈で利下げに踏み切る余地があります。

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