はじめに
個人の資産形成には「分散」が大事だと、金科玉条のように言われていますが、ここにはいくつかの誤解があります。その誤解とは何かを考えていきたいと思います。
分散投資の考え方は3つ
「分散投資」の考え方は、おおまかに3つあります。
第一が資産クラス分散です。ひとつのポートフォリオの中で、株式、債券、不動産、コモディティといった異なる複数の資産クラスに分散させるものです。
第二は地域別分散です。上記のような複数の資産クラスについて、日本国内だけでなく海外各国の資産にも分散させる考え方です。
第三は時間分散です。積立投資のように、買うタイミングをずらして、同一資産を買い続けていくものです。
上記3つの「分散」を組み合わせて投資することが、長期の資産形成には大事だといわれています。つまり、国内外の株式、債券、不動産、コモディティなどを対象にして、定期的に積立投資すること。これは金融庁が個人の資産形成において推奨している「長期・積立・分散投資」の考えそのものといえるでしょう。
この手の投資を、比較的容易に行える金融商品が「投資信託」であることは、疑う余地がありません。ただ、投資信託を用いて分散投資をするうえで、結構な勘違いをしている人がいるのも事実です。たとえば、複数の投資信託を保有すれば、それだけで分散投資効果が得られると思っているケースがそれです。
もちろん自分で日本株に何%、海外株に何%、国内債券に何%、海外債券に何%というように、自分で投資比率を決めて、それぞれの資産クラスに投資するファンドを組み合わせてポートフォリオを構築するなら話は別です。しかし、よくあるのが日本株ファンドと日本株ファンドを組み合わせて投資しているケースです。
アクティブファンドの場合、運用者が違えばパフォーマンスに差が生じることもありますが、運用資産全体で考えると、運用会社の銘柄選別やトレーディングなど、いわゆる運用力の違いによって生じるリターンの差は、それほど大きなものではありません。たとえばAファンドとBファンドがあり、ポートフォリオ全体に占める両ファンドの組入比率が20%だとして、5%のリターン差があったとしても、ポートフォリオ全体のリターンを底上げする効果は0.25%程度です。それだったら、最初から日本株は日本株のインデックスファンド1本だけでポートフォリオを管理した方が、シンプルです。