はじめに

50代で管理職をされている女性から、こんな話をうかがいました。

その女性は大学4年の時、ある総合商社の採用面接を受けたそうです。最終面接に呼ばれたのは、高学歴の女性5人。面接官は男性ばかりでした。面接官からの質問は大変難しいもので、4人の女性は一生懸命考えて回答しました。が、残りの1人はまったく回答ができず、その場でシクシク泣き出したのです。

「結果、採用されたのは泣いた女性でした。驚くというより、やはりそうか、と思いました。当時の女性の採用には、一般職でも総合職でも『うちの社員のお嫁さん候補かどうか』『(面接官が)お嫁さんにしたいかどうか』がありましたから」

男女雇用機会均等法が施行されたのは、今から約30年前の1986年。この女性が新卒採用の面接を受けたのは、同法の施行から間もない頃でした。1990年代に入ってからも、「一般職はいいけれど、総合職なんかで入ったら嫁の貰い手が減るよね」などという話は普通にされていたのです。

それから20年の月日が流れました。やはり今でも、高学歴女性は「結婚が難しい」のでしょうか。


妻の最終学歴の“今”

まず、妻の最終学歴の状況をデータで確かめてみましょう。下図は2000年代後半に結婚した夫婦の妻の最終学歴を示したものです。

妻の最終学歴で最も多いのは高卒(29.5%)です。しかし、その次には大卒(24.7%)が僅差で迫っています。

ここで、短大卒以上とそれ以下で分けてみます。短大・高専卒、大卒、院卒という「そこそこ学歴がある」といえる最終学歴の妻のグループの合計が48.6%、それ以外の中卒・高卒・専門卒業の妻の合計が50.2%となります。ほぼ半々です。

パッと見て、「どちらが有利かといえば、ほぼイーブン。結婚に学歴は関係ないのでは?」と思うような数値です。これだけでも「結婚に学歴は関係ない派」にとっては十分な情報かもしれませんが、念押ししておきたいのが「女性の大学進学率と結婚の関係」です。

結婚と進学率に関連性はあるか

なぜ、大学進学率を確認する必要があるのでしょうか。

もし、女性の大学進学率が非常に高いにもかかわらず、妻の最終学歴が大卒以上と以下でほぼ半々となるならば、少数派の非高学歴女性が健闘しているということになりますので、「高学歴ではないほうが結婚には有利」ということになります。

反対に、女性の大学進学率が非常に低いにもかかわらず、妻の半数が高学歴であるならば、「高学歴のほうが結婚に有利だ」となります。

上に示したデータは2010年の夫婦調査結果を基にしているので、2010年当時の女性の平均初婚年齢を確認してみると、28.8歳です。当時の女性が平均29歳で結婚しているとすると、平均的には2000年前後に高校を卒業していることになるので、その頃の大学進学率を確かめてみる必要がありそうです。

文部科学省の学校基本調査による2000年当時の女性の大学への進学率は31.5%、短大などへの進学は17.2%となり、合わせて48.7%でした。つまり、「2000年の女性の大学・短大などへの進学率」と「その10年後における同程度の学歴の妻の割合」はともに約49%で、ほぼイコールになるのです。

データからは、2000年に高校を卒業した女性ベースで見てもすでに「女性が高学歴かどうかは結婚には有利でも不利でもなく、関係はありません」という結果となっています。つまり、「お勉強ができる女なんて、結婚は難しいんじゃないの?」はまったくの事実誤認、ということが指摘できます。

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