はじめに

総務省の家計調査によると、家計の金融資産が2002年以降で過去最高となりました。特に有価証券の保有の増加がめざましく、株価の上昇を上手に家計に取り込む行動が定着してきたのかも知れません。今回は家計調査の結果を見ながら、今後の投資行動を考えていきます。


金融資産は過去最高に。データが示す「貯蓄から投資へ」シフト

総務省は全国の世帯を対象に家計調査を行っています。家計の収入と支出、貯蓄や負債の状況を調査し、このデータを基に個人消費の実態を把握したり、景気動向の判断に利用したりするなどとても重要な調査です。

調査に協力するのは全国の約9千世帯です。二人以上の世帯は6ヶ月、単身世帯は3ヶ月間継続して家計簿を記入します。筆者の知人でこの調査に協力した方がいますが、家計簿を普段からつけていらっしゃる方だったので、記録は問題がなさそうでした。しかし、慣れない方が毎日家計簿をつけるのは、重要な基幹統計調査への協力とはいえ結構負担かも知れません。

いずれにしても、この調査は日本人のお財布状況を知るのにとても参考となる情報です。実際どのような結果だったのか詳しく見てみましょう。

まず冒頭でもお伝えした通り、2025年2人以上世帯の金融資産は、2002年以降で過去最高となりました。具体的には前年から3.8%増えて平均2059万円になったそうです。

金融資産の内訳を見ると、有価証券は63万円(16.7%)増の440万円と3年連続で前年を上回りました。ここはやはりNISAの普及が大きいのでしょう。家計から投資に資金が回っていることを示しています。

一方、普通預金などの通貨性預貯金が710万円と前年より18万円(2.6%)増え、全体の34.5%を占めており、割合は10年前から1.6倍に伸びています。想像しかできませんが、流動性資金もきちんと保有しつつ、投資をしている状況といえると思います。

それを裏付けするように、以前は家計貯蓄の主役だった定期預金などの定期性預貯金は511万円と27万円(5.0%)減り、02年以降で最も低い金額でした。つまり、ある程度の期間に使う予定のないお金は、金利の低い預金に置かず、経済成長の恩恵を受けるために投資に回すという行動変容が確実に起こっているのではと筆者は感じました。こうした資産構成の変化は、家計が「預金中心」から「投資も活用する」へと確実にシフトしていることを示唆します。

日々の生活を維持し、突発的な資金用途にも対応できるように、概ね日常生活費の3ヶ月分は普通預金に置いておく。今後5年から10年程度の期間で使う予定のあるお金については、定期預金や個人向け国債など安全性を優先した金融商品にする。10年以上先に使う目的のお金は、iDeCoやNISAを利用して投資信託などで運用する、というお金の適材適所が浸透してきたと考えられます。

プラスサム投資の定着と「NISA貧乏」への警鐘

以前は、投資をギャンブルと同義で考える方も少なくありませんでした。「なにが儲かるか?」という話題に終始し、投資した先の未来に期待を持つことなく、今この瞬間の利益に注目する傾向が強かったと思います。

今株を買って、すぐに売るという短期の売買は、「ゼロサム」と呼ばれ経済の成長には貢献しません。社会に求められる製品やサービスを提供する会社の株を買い、長い目でその企業の成長を見届けるような投資は、経済成長につながります。後者は「プラスサム」と呼ばれます。もちろん短期売買そのものが悪いわけではありませんが、家計の資産形成という観点では、企業の成長を取り込む「プラスサム型」が適していると考えられます。

またデジタル化が進むことで、たくさんの銘柄に投資をする投資信託の精度も上がっており、手数料も劇的に下がりました。合理的なインデックスファンドが増えたことは、投資家にとって多くのメリットをもたらしたことでしょう。

様々な面で環境が整い、いよいよ日本人の資産形成も本格的に拡大しているフェーズに入ってきたのかもしれません。

ここで少し心配なことは、「NISA貧乏」という言葉で表現されるような現象です。これは、「NISAの非課税枠を早く埋めなければ損をする」という焦りから、生活がカツカツになってしまうほど、多額の資金を投資に回す状態です。NISAは優れた制度ですが、生活を圧迫してまで枠を埋める必要はありません。

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