はじめに

「ボーナスが入ったら繰り上げ返済しよう」。金利が3〜4%あった時代、これは多くの人にとって当然の選択でした。

ところがここ数年、超低金利の時代が続いたことで「ローン金利より投資リターンの方が高いなら、繰り上げ返済より投資に回した方が得」という考え方が広がりました。実際にそう判断して、余剰資金をNISAや積立投資に回してきた方もいるはずです。

しかし今、状況が変わりつつあります。利上げが続き、変動金利は1%前後まで上昇。毎月の返済額が増えた実感とともに、「やっぱり早く返した方がいいのでは」という気持ちが揺れ戻してきている——そんな方が増えています。

繰り上げ返済か、投資か。今回はあらためてこの二択を整理します。


繰り上げ返済vs投資——金利差で考える

余剰資金の使い道を考えるとき、「繰り上げ返済か、投資か」は多くの方が迷うテーマです。判断の基本軸はローン金利と投資リターンの差(金利差)です。

現在、変動金利型の住宅ローンは多くのケースで1.0%前後です。一方、新NISAを活用した長期の投資の期待リターンは年利回り5〜7%程度と言われています。この差がある限り、理屈の上では投資を優先する方が合理的という結論になります。

では、余剰資金として毎月3万円あると仮定して、「返済に充てる」か「積立投資する」かシミュレーションしてみましょう。

住宅ローンの前提:残り借入残高2,170万円・金利1%

毎月10万円返済➡20年完済で総返済額は 約2400万円
毎月13万円返済➡15年完済で総返済額は 約2340万円

3万円多く返済することにより、5年短縮・利息も約60万円の節約になります。

その3万円を15年間、積立投資した場合はどうでしょうか。

年利回り3%➡元本540万円、運用利益 約139万円(合計 約679万円)
年利回り5%➡元本540万円、運用利益 約254万円(合計 約794万円)

となります。3万円多く返済することで節約できる利息60万円に対して、毎月3万円を15年間積立投資に回した場合、年3%で運用できれば約679万円、年5%なら約794万円、年7%では約933万円となります。そして、この運用がNISA枠であれば利益に税金はかかりません。

では、毎月10万円で返済し15年後のローン残債を投資で運用したお金で繰り上げ返済した場合はどうでしょう。残債は約580万円。差し引くと、年3%の運用利回りではプラス約99万円、年5%ならプラス約214万円となり、いずれも投資を優先した方が有利という結果になります。

さらに、住宅ローン控除の適用期間中(最長13年)であれば、この差はより広がります。住宅ローン控除は残高が多いほど控除額が大きいため、繰り上げ返済で残高を減らすと控除も下がってしまいます。控除をフルに活用しながら投資も続けるというのが、数字の上では最も合理的な選択です。

投資優先の2つの落とし穴

投資を組み合わせることでの注意点もあります。

落とし穴① 投資のリスク
「リスク」とは、単に「損すること」ではなく「結果の不確実性」を意味します。年平均5%の利回りで運用している投資信託でも、振り返ると1年目は+10%、2年目は+2%、3年目は−30%と、年によって大きく上下していることもあります。

15年後に投資の利益で繰り上げ返済しようと思っていたのに、ほとんど増えなかった、むしろマイナスだったという場合もあります。逆に平均利回り10%を超えることもある、それが投資の世界です。

この振れ幅に耐えられるかどうかは、人によって大きく違います。「損が怖くて夜眠れない」という精神的な負荷がある場合は、合理性より自分の感情に正直になることも大切です。

落とし穴② 金利上昇の可能性
現在、変動金利は年1%前後、固定金利は3%前後ですが、さらに上昇する可能性もあります。現にアメリカの住宅ローンの固定金利は2026年6月時点で6~7%台です。

先ほどのシミュレーションは1%を継続していた場合ですが、5年間は年利1%、それ以降2%になった場合でシミュレーションしてみると、15年後の残債は約612万円となり、投資と利益の差が縮まります。

金利がさらに上昇して投資利回りを上回るようになれば、「早めに返済した方がよかった」という結果になります。金利環境は常に変化するため、今の状況だけで判断せず、定期的に確認し見直すことが重要です。

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