はじめに
2026年の株式市場ほど、教科書にはない異例な動きとなっている年はないでしょう。
日経平均株価が大きく上昇して最高値を更新する一方で、「自分の保有している銘柄は一向に上がらない」「むしろ下がっている」と違和感を覚えている投資家の方も多いのではないでしょうか。
今回は、現在の株式市場で起きている偏調な値動きの正体を、3つの重要なテクニカル指標(NT倍率・25日移動平均線乖離率・騰落レシオ)から順を追って検証します。
最高18.2倍まで急上昇。特定の「値がさ株」が主導したNT倍率の歪み
1つ目の指標は「NT倍率」です。NT倍率とは、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割った数値であり、両指数の相対的な強さや市場の偏りを測る指標として知られています。
NT倍率が上昇しているときは、TOPIXに比べて日経平均の上昇率が高く、特定の大型株や値がさ株が相場全体を牽引している状態を示します。反対に下落しているときは、TOPIXが強いか、中小型株を含めた幅広い銘柄に資金が波及している状態を意味します。
ここ数年は13倍から16倍の間で推移していましたが、2026年は5月後半から6月下旬にかけて急上昇し、6月25日には過去最高となる18.2倍まで跳ね上がりました。この日の日経平均が72,366円であったのに対し、TOPIXは4,016ポイントにとどまり、日経平均だけが独走する展開となったのです。
なぜこのような極端な状況が生じたのでしょうか。理由は、日経平均株価が「値がさ株」の影響を強く受ける独自の算出方法を採用している点と、半導体関連をはじめとする一部の特定主力株へ資金が集中したことにあります。
実際、7月31日時点の日経平均寄与度を見ると、アドバンテスト(12.1%)、ファーストリテイリング(9.7%)、東京エレクトロン(8.6%)、ソフトバンクグループ(6.5%)の上位4銘柄だけで、日経平均全体の約35%を占める構造となっています。
しかし、7月下旬に入ると状況が一変し、NT倍率は15.46倍まで急低下しました。6月25日の水準と比較して日経平均が10,932円も下落したのに対し、TOPIXの下落はわずか42ポイント安にとどまりました。半導体関連株が一斉に売られた一方で、メガバンクを筆頭に地銀や証券などの金融株がTOPIXの下値をしっかりと支えたためです。
まさに「山高ければ谷深し」。移動平均線乖離率が教える買われすぎの恐怖
2つ目の指標は「25日移動平均線乖離率」です。これは、現在の株価が25日間の平均値からどれだけ離れているかを示し、買われすぎや売られすぎを判断するための指標です。一般的にプラスマイナス15〜20%を超えると、平均線へと戻る修正力が働くとされています。
前述した日経平均の上昇局面(6月下旬)において、電子部品大手の太陽誘電(6976)は25日移動平均線乖離率がプラス60%以上、NAND型フラッシュメモリを手掛けるキオクシア(285A)もプラス40%という買われすぎな水準に達しました。
ここで注目すべきは企業の時価総額規模です。時価総額の小さい中小型株であれば、浮動株が少ないため乖離率が100%を超えるなど大きく跳ね上がることも珍しくありません。しかし、数兆円規模を誇る超大型株でこれほど極端な乖離率が記録されることは極めて異例です。
その後、両銘柄は激しい売りに見舞われ、わずか1か月後の7月29日にはキオクシアがマイナス46%、太陽誘電がマイナス36%と、真逆のマイナス乖離へと転落しました。短期間での急上昇と急降下により、大きな損失を被った投資家も少なくなかったはずです。まさに「山高ければ谷深し」の格言通り、相場において急高騰した銘柄ほど、その後に訪れる反動も非常に大きくなるという典型的な例となりました。