はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
資産の中の現預金の割合が多いように感じています。今後、物価が上昇する可能性が高いことや、まだ20代なのでもう少しリスクを取ってリターンの大きい資産に投資したいと考えています。具体的にどのような手段が考えられるでしょうか? また相対的に日本円の価値が下がっているように感じることから外国通貨の預金に興味を持っていますが、どのような投資方法があるかをよく理解できていません。すでに以下を始めています。アドバイスをください。
【現在の投資状況】
・10年以上の中長期的な資産形成として、ノーロードの積立投資信託に毎月5万円を投資しています。今は新興国株式や先進国株式の比率を比較的高めに設定したポートフォリオを組んでいます。
・短期的な資産形成として日本株式投資を始めましたが、まだまだ勉強中で利益を得るにはいたっていません。
・年金(確定拠出年金など)を除く資産の割合:総額約800万円
・預金(日本円):88%
・日本株式:2%
・投資信託:10%
・昨年は150万円程度の黒字会計でしたが、今後も同じ水準を保てるかどうかは不透明です。NISA口座はまだ開設していません。
(20代 既婚 女性)
内藤:ご質問ありがとうございます。
まずは理想のポートフォリオを
まだ20代ということで、資産規模も勘案すればリスク許容度はかなり高いと思いますが、現状のアセットアロケーションは円の低リスク資産に集中しており、適切な資産配分とは言えないと思います。
積立で5万円を投資しても、年間ではわずか60万円ですから資産配分の変化には時間がかかりすぎます。
まずは自分の理想のポートフォリオを作成することから始めるべきだと思います。明確な目標設定をすることによって、今なにをすべきかが見えてくるのです。
外貨資産の割合はどうする?
資産運用で最初に考えたいのは、外貨資産の保有割合です。ご認識されているように外貨資産をもっと増やすべきと言えますが、その比率をどのように決めるかに結論はありません。
ただし、円安になるか円高になるかわからないとしても、資産の半分を外貨で保有することで、どちらに転んでも大きな失敗にはつながりません。
現状のような円資産偏重の場合は、円安のリスクを常に大きく取っているということになります。
6つの資産で考える
次に株式資産と債券資産の比率を考えます。株式資産は株価上昇の恩恵を受けますが、元本のリスクが高くなります。逆に債券資産は元本の安全性は高いですが、リターンが低く守りの資産と言えます。
円と外貨、株式資産と債券資産という2つの分類から、資産の種類(アセットクラス)を4つに分けて、それぞれに対する配分比率を決めていきます。
また流動性資産やその他の資産もアセットクラスとして含めれば、6つの資産に分類してそれぞれの配分を決定することができるのです。
このようにして決まった資産配分を現状の資産状況と比較することで、今後どのような配分変更をしていけばよいかが見えてきます。
目標は時間軸でキッチリ
資産配分はいきなり変えると大きなリスクがありますが、いつまでたっても本来のあるべき姿にしないのもリスクを抱えたままの状態になります。ある程度の期限を切って、変更していくことが望ましいでしょう。
たとえば、1月中に資産配分の理想形を決めて、夏頃までかけて、徐々に資産配分を変更していくといったプランを立ててみるのはどうでしょうか。
時間軸の目標を設定することで、ダラダラと現状を引きずってしまうという、ありがちな失敗を防止することができます。
金融資産でポートフォリオを組むのであれば、まずは投資信託のインデックスファンドを組み合わせるのが基本だと思います。
さまざまな運用会社から、細かいアセットクラスごとの低コストインデックスファンドが設定されています。それらを組み合わせて、自分にとってベストな資産配分を実現するようにしてください。