はじめに
債券・金・為替を組み合わせる守りの資産

そのためにも、最初からすべての資金を投資せず、現金や債券など、再投資できる余力を一定程度持っておくことには意味があります。
特に、金利が上昇した現在は、債券の位置づけも変わっています。ゼロ金利時代には、債券を持つメリットは小さくなっていました。しかし現在は、債券から一定の利息収入を得られる環境が戻ってきています。
債券には、株式が下落したときのクッションだけでなく、利息収入というリターン源泉としての役割もあります。株式が30%下落したとき、すべての資産が同じように下がれば、買い増す余力を失います。守りの資産は、次に攻めるための資産でもあります。
金には配当も利息もありません。そのため平時には株式や債券より見劣りすることがあります。しかし、インフレ、通貨不安、財政不安、地政学リスクが高まったとき、株式や債券とは異なる値動きを期待できます。特に日本在住者にとっては、円だけに資産を偏らせないという意味でも金を一定比率持つ意味があります。
金を「高いリターンを狙うための資産」と考えるよりも、「自分の資産を円と企業利益だけに依存させないための資産」と考えた方がわかりやすいと思います。
金を持ちすぎれば、株式の成長を取り逃がす可能性もあるため、あくまで資産全体の一部として考えることが重要です。
日本人が海外資産に投資する場合には、為替も無視できません。米国株が10%上昇しても、ドル円が大きく円高方向に動けば、円換算ではリターンがかなり抑えられることがあります。反対に、米国株があまり上昇しなくても、円安が進めば円ベースでは利益が出ることがあります。
この数年間、日本人が米国株や全世界株から得たリターンの一部は、株価上昇だけでなく円安によるものでもありました。
したがって、海外株式の過去リターンを、そのまま自分の将来期待リターンに置き換えないことも重要です。生活費、教育費、住宅費、老後の支出の多くは円で支払います。外貨建て資産は円安やインフレへの備えになりますが、すべてを外貨資産にする必要はありません。円預金、個人向け国債、円建て債券、日本株、日本REITなどを一定程度持つことにも意味があります。
10年で資産倍増を目指す場合でも、為替リスクを無視してはいけません。資産額が大きくなるほど、為替の変動だけで年間の資産額が大きく動くことがあります。
円安の恩恵を受けつつ、円高局面でも耐えられる配分にしておくことが、長期継続の鍵になります。
入金力とNISAを含めて考える資産形成
72の法則には一つ大きな弱点があります。追加投資を考慮していないことです。
たとえば1000万円を、追加投資なしで2000万円にするのであれば、10年間で約7%の複利リターンが必要です。しかし、毎年追加で投資できるのであれば、必要な運用利回りは下がります。
資産形成期では、利回り1%の差よりも、年間入金額の差の方が結果に大きく影響することがあります。市場のリターンは自分で決められません。しかし、収入を増やす、固定費を見直す、投資額を増やす、仕事の単価を上げるといったことは、ある程度自分でコントロールできます。10年で資産を倍にしたい人ほど、投資利回りだけを見るのではなく、「運用利回り × 時間 × 入金力」の3つで考える方が現実的です。
その考え方と相性が良いのがNISAです。NISAでは、運用益や配当が非課税になるため、長期の複利効果を高めることができます。重要なのは、「NISAで何を買えば一番儲かるか」と考えることではありません。「10年、20年と利益を積み上げたい資産をどこに置くか」と考えることです。
短期売買を繰り返すよりも、長期で持てる低コストの投資信託やETFを中心にする方が、NISAの制度メリットを活かしやすいと思います。成長投資枠では、高配当株、ETF、個別株、テーマ型商品なども選択肢になります。ただし、NISAだからといって高リスク商品に偏りすぎるのは避けたいところです。
NISAでは損失を他口座の利益と損益通算できないため、値動きの極端に大きい商品ばかりを入れることには慎重さも必要です。